眼鏡の聖地・鯖江が挑んだ、SNSプライバシー保護メガネがカッコイイ
福井県鯖江市は、メガネフレーム全国シェアの95%を占める「メガネの聖地」です。100年以上の歴史を持ち、量産型ではない伝統産業として今なお職人の技で世界に誇る良質なフレームを生み出し続けています。
そんな鯖江市の眼鏡製造技術と、眼鏡資材を取り扱う株式会社ニッセイ(本社:鯖江市)が、SNS社会のプライバシー問題に挑戦しようという話が舞い込んできました。
地域×クラウドファンディング FAAVOを利用し、世界初のプライバシー保護メガネ「PrivacyVisor」の製造にむけて資金調達を行っています。一体どんなスゴいメガネが誕生するのか、鯖江が挑戦する「近未来のメガネ」開発に迫ってみましょう。
あなたの3日前の行動、インターネット検索で特定できます!!
はじめまして!今回のプロジェクトを企画した株式会社ニッセイの白崎です。
突然ですが、“皆さんの行動が知らない間にインターネット上に公開され、さらに検索できる恐れがある”のをご存じですか?
FacebookやtwitterなどのSNSの普及により、街や施設内で撮った写真が気軽にインターネットに公開できるようになりました。このSNSは、近況などを共有し友だちと繋がることができる、楽しく便利なツールで多くの人々が利用しています。
実際に多くの写真が投稿されていて、Facebookだけでも、なんと1日約3億5000万枚にもなります。
じつは、これらの写真、昨今の「顔認識技術」向上により、人物特定が簡単にできてしまうのです。
さらに、写真に付随する情報や顔認識技術により、「誰が」「いつ」「どこに」が簡単に特定されてしまいます。
「他人が撮った写真の背後にたまたま写った」ただそれだけで、例えば”休日に誰と観光地や温泉へ行った”ことがインターネット上に公開され、他人に分かってしまうのです。
世界初!人物の特定を不能とするメガネ!!
ちなみに当社は、世界TOP3の眼鏡産地「さばえ」で、眼鏡用資材を取り扱う総合商社です。これまでに、今ではスタンダードとなっているチタンフレームをはじめ様々な新商品を市場に送り出し、メガネ業界に貢献してきました。
約40年の歴史の中で培われた眼鏡製造技術については、強い自信を持っています。
その技術を活かすことにより、このたび世界初となる新たな商品を開発しました。
世界初!人物を特定できないメガネ「PrivacyVisor」を販売します!
この「PrivacyVisor」をかけることにより、たとえ知らないうちに写真に写ったとしても”休日に観光地や温泉に行ったこと”がインターネット検索などで特定されることはありません。
現在、プライバシー保護については、サービスを提供する側(Googleやfacebookなど)の自主規制や法律の制定などで対応しようとしています。しかし、時間がかかったり、整備が万全でなかったりなど、利用者からすると不安がつきまといます。
「自分のプライバシーは自分で守る」そのためのツールが「PrivacyVisor」です。
「顔泥棒」をブロック!「PrivacyVisor」
先ほどご紹介しましたが、自分の意図せぬところで顔が盗まれ(写真が公開)、行動などの個人情報がインターネットで調べられてしまう時代となりました。
さらに、GoogleGlassなどのカメラ搭載ウェアラブルデバイス(身体に身につけて利用する端末)などを利用すれば、デバイスを通して写った人の個人情報(名前や住所、年齢、勤め先など)が、その場でリアルタイムに分かってしまう可能性もあります。
そこで開発されたのが、顔認識を失敗させる技術です。
開発したのは、国立情報学研究所の越前功教授です。
(ちなみに福井県の旧国名も「越前」です。すでに親しみを覚えます。)
教授は、顔を検出する際のパターン(ルール)に着目し、メガネでそれを失敗させる技術を確立しました。
技術の一つを紹介します。
デジカメなどの機器が顔を検出する際に「目のあたりが暗い」という条件で顔として認識しています。そこで、メガネで光を反射させて「目のあたりを明るくする」ことで、顔として認識させなくします。
これらいくつかの技術を組み合わせたものを、鯖江の眼鏡づくりの技術を用いて開発研究を進めた結果、『PrivacyVisor』を誕生させることができました。
なお、この顔認識拒否のシステムの取り組みが、学術界でも高く評価され、越前教授は「第13回 ドコモ・モバイル・サイエンス賞」において「先端技術部門優秀賞」を受賞するなど、数多くの賞を受賞されています。
デザインは建築デザインのプロ、安藤毅氏、片方聰氏が担当。
違う分野からの新しい発想で、固定概念を覆す今までにはない非常にスタイリッシュなデザインとなりました。
打ちあわせの様子。左から、安藤氏、弊社担当マネージャー佐藤、越前教授、片方氏
海外メディアからの問い合わせが殺到!!
「PrivacyVisor」は、多くのメディアに取り上げられました。
・日本経済新聞,朝刊7面(2013年6月2日)
・NHK総合,ニュースウォッチ9 (2013年10月29日)
「”顔認識”進むデータ化,課題はプライバシー保護」
・TV東京 WBS「プライバシー保護メガネ」(2013年11月8日)
・読売新聞,夕刊9面(科学面)(2014年5月22日)など
特にプライバシー先進国であるアメリカやヨーロッパなどでは反響が大きく、すでに300以上のメディアに取り上げられ、多くの問い合わせを受付けています。
さらに2015年8月からは、ベルリンにある「ドイツ技術博物館」にも展示されます。
※ドイツ技術博物館は、ミュンヘンのドイツ博物館に次ぐヨーロッパ最大規模の技術博物館です。
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