酒好きにはたまらない臭さ。魔性の味覚と呼ばれる滋賀の名物『鮒鮓』

前回、旨すぎて言葉がでない滋賀県の郷土料理「鮒の子つき」について紹介しましたが、鮒料理でもうひとつ忘れてはいけないのが、「鮒鮓(ふなずし)」です。

紀行作家・郷土料理写真家の飯塚玲児さんによると、強烈な匂いのため、人によっては好きか嫌いかに別れる料理なんだそうですが、一度好きになったらやみつきになる「琵琶湖の魔味」だそうです。一体どんな代物なのでしょうか?

「琵琶湖の畔の“魔味”——鮒鮓」(滋賀県内各地)

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とかく珍味と呼ばれるものは好き嫌いがはっきりと分かれるものだが、琵琶湖畔の名物である鮒鮓も、その代表格の一つだろう。

鮒鮓とよく対比されるものに、伊豆七島、特に新島の名物であるくさやの干物がある。くさやにしろ、鮒鮓にしろ、どちらも独特の香りがある。いや、香りというよりはむしろ匂い、さらに言ってしまえば“臭気”と呼んでもいい。はっきり言えば“臭い”のだ。

ところが、この“臭さ”こそが、両者の珍味としての地位を確立せしめているのだとも言える。天下の珍味を臭い臭いと言うと叱られそうだが、この強烈な匂いは、好きな人にとってはたまらなく芳しいものでもある。

この匂いが、熟成された身の味わいと合体したときにこそ、これらが“魔性の味覚としての底力を発揮する。臭くないくさやなんて面白くも何ともないし匂いがしない鮒鮓なんて気の抜けたビールのようなものだ。

鮒鮓はご存知の通り、琵琶湖で獲れるニゴロブナを材料にした“なれずし”である。以前もこのメルマガに登場した滋賀県五個荘町(現・東近江市)の観光担当者は、鮒寿司でも鮒鮨でもなく鮒鮓」である、というのが持論で、「乳酸醗酵して作るんやから、酸っぱいんや。江戸前の早寿司とは全然違うものなんや。だから酢と同じ“つくり”でなければあかんのや」と熱く語っていた。

今では地元・琵琶湖畔でも「鮒寿司」「鮒鮨」という表記をしばしば見かけるが、かの観光担当者の意見は、なるほど、と腑に落ちる説だ。よって本稿では“鮒鮓”の字を使う事にする。


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