全国各地には様々なキャラクターが存在しますが、沖縄県宮古島には知る人ぞ知る異質なカルトキャラが存在しています。その名も「宮古島のまもるくん」。サトウキビ畑が続く中に突然現れるその「キモかわキャラ」の正体とは?
元祖ご当地キャラ「宮古島のまもるくん」
次から次へと様々なものがブームとなる我が国日本では、今なぜこれが?というものが突如超ブームとなって社会現象化することもけっして珍しくはありません。
日本全国に大旋風を巻き起こした「ゆるキャラブーム」もそんな現象のひとつで、すでにブームの火は沈下したように見えながらも、昨年2016年に開催された「ゆるキャラ®グランプリ」(※ゆるキャラ®という文字は、みうらじゅん氏の著作物であるとともに扶桑社、及びみうらじゅん氏の所有する商標です。)では、なんとゆるキャラのエントリー数が1421体(ゆるキャラの数え方は“一体”なんですね!)にものぼったことが記録されているとは驚きです。
1421体のキャラクターって! どれだけキャラクター大国なんでしょうか、日本。
とはいうものの、「くまもん」「ふなっしー」などの超有名キャラはさておき、どのゆるキャラもみんな似たりよったりで、正直、私にはその違いがまったくわかりません。TVに出てくるアイドルがみんな同じ顔に見える、というのと同じです。
そんなキャラ立ちに欠けるゆるキャラ市場を眺めていると、いつもどうしても頭の中にある強烈なご当地キャラの存在が思い浮かぶのです。
そのキャラとは、「宮古島のまもる君」。知る人ぞ知るカルトキャラ的存在ですが、みなさんはゆるキャラブームなんぞが起きるずっと前から粛々と地元キャラクターとしての任務をまっとうするまもる君をご存知でしょうか?
宮古島のまもる君とは、本名・宮古島まもる君。美ら海に囲まれた宮古島の交通安全をPRするキャラクターです。正式な肩書きは「宮古島安全協会職員」兼「宮古島警察署交通課職員」とあるので、公務員さんなんですね。
宮古島のあちこちに点在し安全運転を呼びかけ、ときにサトウキビ畑をバックに、ときに野原とその先に輝く水平線をバックに県道や国道沿いで行き交う人々や車を見守っているのです。
まもる君の誕生は1996年に設置されたことにはじまり、現在その数は全19体。宮古島とその近隣の離島にあり、19体のうち1体は宮古島から橋を渡って行くこともできる伊良部島に、そしてもう1体はもともと宮古島上野にあったものが2010年の人事異動によって多良間島空港に移されています。
実は、19体をいっしょくたにまなぶ君呼ばわりする人が多いのですが、19体の中にまもる君はひとり。あとの18体はまもる君の兄弟で、それぞれ“いたる君”“すすむ君”などちゃんと名前もついているそうです。
また、18人の兄弟のほか、2011年には「宮古島まる子」ちゃんという妹も登場しました。まる子ちゃんは真っ赤な白バイ隊の制服を着用し、宮古島警察署に配属されているそう。
聞けば聞くほど、「へぇーーー」という感じのまもる君ですが、まだまだ小ネタが満載です。
なんとローカルユニット「パニパニJr」によって「宮古島まもる君の歌」もリリースされています。この曲は2010年8月に携帯着うたサイトの「沖縄ちゅらサウンズ」で10週連続1位を記録。
これは、MONGOL800の「小さな恋のうた」に次いで史上2位の記録だというので、地元でのその人気の高さが伺えます。
もちろん観光客にも大人気で、わざわざ車をとめてまもる君と一緒に記念撮影をする光景は見慣れたものですし、島のまもる君ポイントを制覇することを目的にドライブをする人も。
衝撃的な出来事としては、2011年には2体のまもる君のヘルメットや足が何者かによって破損されるという事件が起こりましたが、心ある地元のボランティアの人々によって無事修復されています。翌2012年には宮古島市から特別住民票も発行されたそう。
まもる君人気にこたえようと、グッズのほうもかなりの充実度。ステッカーやTシャツ、ストラップなどの定番商品から文房具にいたるまでかなり多岐にわたるラインナップが用意されています。
お土産用には、イラストをプリントしたクッキーや、まもる君型のボトルに入った泡盛など、渡す人を間違えるとありがた迷惑になりそうなアテイムが勢ぞろいです。
そんな宮古島では知らない人がいない超がつく有名人のまもる君ですが、島から一歩出るとあっけないほどその存在が知られていないのが不思議です。
島人以外でまもる君を知るのは、宮古島に行ったことがある人だけ。世の中全体がご当地キャラクターブームに沸く中、まもる君は粛々と宮古島の安全を守り続けていました。
そんなこと言っては失礼かもしれませんが、日本全国のローカルが自分たちのキャラクターPRに躍起になっていても、のんびりとした気質の島の人たちはあまりまもる君のアピールに興味がなかったのかもしれませんね。
いやいや、島の人たちは一生懸命にまもる君を全国区で人気者にしようとしているのかもしれませんが、暑い南国だけにあまり熱が入らなかったかもしれません。
そんなわけで、旅行者の多くはまもる君の前情報なしに宮古島を訪れることになり、現地で衝撃の初対面を果たすということになるのです。まもる君という存在を知っているならいざ知らず、はじめての人にはあのビジュアルはかなりのインパクト。
空港に着いてレンタカーを借り、ウキウキと島を車で走っていると、突然サトウキビ畑を背景に佇むまもる君の姿が登場するわけです。正直ファーストインプレッションはちょっと怖い印象という人がほとんどかと思います。
ただ、見慣れると“怖い”というよりも“キモい”ということに気づき、何体ものまもる君と対面しているうちにだんだん“キモかわ”キャラだと納得するにいたり、そのうちまもる君と遭遇するのが楽しみになってきたりするわけです。
真夏の灼熱の太陽が照りつける日も、台風で荒れ狂う雨風に叩きつけられる日も、24時間、365日ロードサイドに立ち人々の安全を見守るまもる君ですが、臨時に振り込め詐欺啓発のために駆り出されたり、一日税務署長を務めたりと、その活動は多岐にわたる様子。
なるほど、宮古島の平和はまもる君によって保たれていると言ってもいいのかもしれませんね。
まだ人生でまもる君とご対面したことがないという人は、ぜひ南の島、宮古島を次の旅の行き先に選んでみてはいかがでしょうか。
- image by:小林繭
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