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季節を食べる。県内外から若者が殺到する「ハンモックカフェ アマカ」

坂本 正敬
坂本 正敬
2019/01/06

築100年近くの蔵付き古民家を9カ月でリノベーション

image by:柴佳安

そんな坂上さんの思いは、坂上さんにとって初めての出店になる「hammock cafe Amaca」で結実します。

「こんなカフェがあったら楽しい」というアイデアを膨大にストックしてきた坂上さんは、五感で楽しめるお店作りをスタート。旧宿場町で100年以上の歴史を目撃してきた蔵付きの古民家を9カ月かけてリノベーションし、座席の一部としてハンモックを吊るすなどして、カフェとしてオープンさせます。

9カ月もの時間を費やした理由は、梁(はり)を自ら鉄骨で補強するなど、坂上さん自身がリノベーションに大きく携わっているから。

「古民家を再生したという自負を持つために、まずは自分が汗をかかなければ駄目だと思いました」

店内を見回してみると、蔵の入り口がそのまま残されていたり、柱に前の所有者の名前が残っていたりと、モダンでありながら歴史を感じさせる雰囲気がたっぷり。同店を手がけた建築士の西出雅史さんも、

「建築士として経験を重ねると、何を残せばオシャレに見えるのか分かるようになります。壊すのは簡単ですから、できるだけ残せるものは残したいと思いました」

と、設計のコンセプトを教えてくれました。もちろん、単に伝統や歴史を保存するというスタンスには終始していません。例えば伝統的和風建築で多用される柱の露出した真壁も、塗りに関してはあえてセオリー通りのしっくいを採用しなかったと西出さんは語ります。

旬の食材をふんだんに盛り合わせた華やかなパフェをより視覚的に楽しんでもらえるように、モダンな印象のグレーの壁色で統一するなど、随所に細やかな配慮と注意が払われているのだとか。

image by hammock cafe Amaca

hammock cafe Amacaの盛況が、町のにぎわいも生みつつある

「hammock cafe Amaca」の魅力はもちろん、建物の面白さだけではありません。「楽しいごはん」を提供したいと願う坂上さんは、自らの役割を飲食業ではなくサービス業のオーナーと定義し、ハンモック使用のレクチャーから料理の配膳(はいぜん)、会計にいたるまで、来店者を楽しませるコミュニケーションを徹底しているのだとか。

週末などは1日に150人ほどの来客があると言います。単純に効率を考えれば、例えば会計も前払いのチケット制の方が回転が速くなるはず。その点を聞くと、

ごちそうさまの顔を拝見したいので、効率的ではありませんが、後払いは譲りたくありません」


と坂上さんは語ります。

ランチメニュー。すべて1,500円(image by:hammock cafe Amaca)

同店が常連客とどのような関係を結んでいるのか、よく伝わってくる印象的なエピソードもありました。

筆者が取材で閉店後の時間に訪れると、クローズしたはずの店内で1人の男性が席に案内され、パフェを食べ始めます。不思議に思って聞くと、同店のオープン当日に初めて来てくれた第1号の来客者で、以来1年かけて81回も足を運んでいる常連の方だと判明しました。

お店の側が常連客を招待し、オープン1周年記念で作られたパフェを特別にふるまっていたのですね。常連の方に話を聞くと、

「パフェや料理の味わいは当然素晴らしいのですが、何より皆さんのおもてなしが温かくて、気がつけば週末や仕事終わりに、癒やされたくて足を運んでいます」

と、熱心に通う理由を明かしてくれました。思えば、筆者が取材で入店した際に居残っていた他の人たちも、なじみ客である自分の立場にどこか矜持(きょうじ)を感じている風がありました。

一方で常連客の存在を誇りに感じる坂上さんたちお店の側も、誠心誠意の思いでおもてなしを返しています。そうしたお店と来店者の双方で交換される何事かの温かい感情が、2017年11月に誕生し、1周年を迎えた同店の人気を支えているのかもしれませんね。

周囲のお店にも話を聞くと、「hammock cafe Amaca」に来店する人のにぎわいが町全体に波及している好況も見られると言います。

地域の再生にも貢献する同店。富山旅行の際、特に県東部の観光地、立山・黒部エリアに訪れた際には、ぜひとも立ち寄ってみてくださいね。

  • hammock cafe Amaca(ハンモックカフェ アマカ)
  • 富山県滑川市瀬羽町1882-1
  • 076-456-5615(予約不可です)
  • 定休日:火曜・金曜
  • 11:00〜18:00(L.O.17:00)
  • http://cafe-amaca.com/
  • 売り切れ次第終了となります

※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。

翻訳家/ライター。1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の紙媒体、WEB媒体に日本語と英語で執筆する。 主な訳書に『クールジャパン一般常識』(クールジャパン講師会)。

季節を食べる。県内外から若者が殺到する「ハンモックカフェ アマカ」
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