京都・蓮久寺の怪談和尚が説く恐ろしくもありがたい「怪談説法」とは?

特別に怪談説法をお話いただきました!

ーーよろしければ最後に、怪談説法を一話お聞かせ願えませんか?

はい、喜んで。それでは、私が大学生最後の年に念願の一人暮らしを始めた時の出来事をお話しましょう。

学生寮を出て、とあるアパートへ引っ越した当日の夜でした。電気を消してベッドで横になっていると、突然金縛りにかかりましてね。金縛りは何度も経験しているので「またか」という感じでじっとしていたら、いきなり右手首を掴まれてギューッと右のほうへ引っ張られるんです。

腕が完全に伸びきった状態になっていたのですが、手首より先は動かせるとわかって、動かしているとちょうどペットボトルくらいの太さのものに触れて、とっさにギュッと握りしめたんですね。そうしたらふっと金縛りが解けて、ひと安心しました。

ですが、よくよく考えると、ベッドの右側はすぐ壁になっていて、寝ている私の右腕が伸びるはずがないんですよ。伸びたような感覚があっただけかなぁと自分を納得させつつ、ここはいわく付きの部屋に違いないと思って、次の日に大家さんのところへ聞きに行ったのですが、築年数も浅いし事故物件なんかじゃないよと言われて……。

するとその夜、また金縛りに遭いました。しかも今度は両耳を塞がれて、頭を左側へ向かせようとするんです。力負けをして左を向いた時でした。見知らぬおじいさんが立ったまま宙に浮いているんですよ。怖い!と思った瞬間、おじいさんと目が合って金縛りが解けました。

再び大家さんのところへ行ってその一件を話し、おじいさんに心あたりはないかと聞いたら、「あっ、そういえば最近、三木君の隣の部屋の人を見ていない」と言うので、大家さんと一緒にお隣のインターホンを鳴らしてみたのですが、まったく反応がありませんでした。

アルバイトがあったので私は一旦その場を離れましたが、夜帰って来てみるとアパートの周りに何台もパトカーがとまっていました。隣の部屋に住んでいたおじいさんが首を吊って亡くなっていたらしいのです。

大家さんの話によると、遺書が残されているし、密室の状況から見ても自殺で間違いないだろうと。ただ一つ不審な点があって、おじいさんの右足首に誰かが強く握った痕が残っているというんです。

部屋のどこで首を吊っていたんですかとたずねたら、ちょうど私がベッドを寄せていた壁のあたりだと……。そう、1日目の夜に私が掴んだものは、おじいさんの足首だったのです。

おじいさんが残した遺書には、一人は寂しいといった言葉がたくさん書かれていたそうです。人間関係が希薄になった今日、おじいさんのように孤独を抱えながら生きている人は少なくないのではないでしょうか。

表面上は明るくふるまっていても、寂しい思いをしている人だっているはずです。せめてお隣同士で声を掛け合うくらいはしていきたいですね、というお話でした。

ーー亡くなったおじいさん、三木住職に見つけてほしかったんでしょうね……。切ないお話ですが、やっぱり怖い! そういう時の対処法があれば教えてください。

一番手っ取り早いのは、手を叩くことです。拍手にはその場を清めたり、人の心を鎮める効果があるといわれているので、怖い話を聞いたり、怖い体験をしたあとにおすすめです。お清めの塩を首筋にふりかけたり、お風呂に入れたりするのもよいでしょう。

ーー怪談には恐怖だけでなく、生きるヒントも隠されているんですね。説法というと堅苦しいイメージがありますが、怪談説法なら気軽に入っていけて、仏教を身近に感じることができそうです。貴重なお話をどうもありがとうございました!

怪談説法を生で聞いてみたいという方は、三木住職のフェイスブックで最新情報をチェックしてみてくださいね。お近くで開かれる講演会や怪談ライブがあれば、ぜひ足を運んでみましょう!

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  • 光照山 蓮久寺
  • 京都市下京区藪ノ内町607
  • 078-381-6628(蓮久寺別院)
  • 公式サイト
  • source:KYOTO SIDE
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