古い建物独特の長い時間を経てきた風合いは、現代の建築には無い風格があり心惹かれるものです。文化財として保存されているものも多いですが、なかにはまだ現役で稼働している建物もあります。
今回の無料メルマガ『ホテルの遊び方』で著者の西田淑子さんが取り上げている、大正元年創業の旅館「大正楼」もその1つ。「ほぼ創業当時のまま」という建物の魅力を、西田さんがたっぷりと紹介してくださっています。
大正楼
こんにちは、ホテルの遊び方の西田淑子です。
奈良県桜井市の古い旅館、大正楼を取材しました。創業は、大正元年です。日本最古の神社、大神神社(オオミワジンジャ)のあるJR三輪駅からすぐ近くです。三輪そうめんが名産です。また、奈良の地酒の蔵元、今西酒造も近くにあります。
観光地ではない、というのがいいですね。リピーターさんがしっかりついている宿で、「ここに来ると、静かでほっとする」と言われる人が多いそうです。
創業当初は、料理屋でしたが、山辺の道が、ハイキングコースとして世の中に紹介された頃に、旅館を始めました。現在の四代目のご当主は、こう言われます。
「その前からも、泊まっていった人はいたと思います」
私もそう思います。食事してお酒を飲んだら、そこにそのまま寝てしまいたい、と思うでしょう。その頃は、規制も少なかったでしょうから、そういったことは、他の古いところでも、しばしばあったようです
建物は、ほぼ創業当初のままです。泊まると、一部屋だけを見ることになりますが、取材をすると、複数の部屋を見ることができます。大正楼では、全客室を見ることができました。
旅館が面白いのは、すべての客室の内装デザインが異なることです。客室の大きさや形、床の間の形や使われている材、天井や壁の木組み、襖絵、などがそれぞれ異なります。
日本の建築美は、主張が控えめなところです。しかし、何らかの意味を持たせます。これが面白いところですね。古い旅館に泊まられたら、他の客室を見てみたいと思いませんか。頼んでみられたら、見せてくれるかもしれませんね。
大正楼の取材記事は、『日本の老舗』白河書院発行、10月15日発売号で掲載の予定です。
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- ※初出:2019/08/26・MAG2 NEWS
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。