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少し先の世界遺産候補に!?日本モダニズム建築の傑作

国の重要文化財・聴竹居(ちょうちくきょ)

聴竹居は2017年、日本イコモス「日本の20世紀遺産20選」に選ばれ、20世紀を代表する世界文化遺産候補として注目されています!

※イコモスとはユネスコ世界遺産の諮問機関

天王山の麓の住宅街に佇む聴竹居は、建築家・藤井厚二の自邸として1928(昭和3)年に建てられました。明治に入り、急激に日本が欧米化される中、日本の気候風土と日本人のライフスタイルに合った住まいを見直し、生涯追求し続けた藤井氏の想いがたくさん詰まった聴竹居は、「日本の住宅」の理想形といわれています。

聴竹居倶楽部の松隈章さん

藤井氏は東京帝国大学を卒業後、竹中工務店に在籍したつながりから、現在は同社が所有。聴竹居倶楽部は地元住民が中心となり事務局を運営し、ガイドもしています。

聴竹居の魅力にどっぷりハマって23年、聴竹居倶楽部の代表理事兼、竹中工務店の設計士でもある松隈章さんに見どころを教えてもらいました。

―――聴竹居の一番の見どころは?

男山と三川(宇治川、木津川、桂川)合流の絶景を望む縁側です。こちらはサンルームとベランダの両方の機能をあわせ持っています。水平に連続する窓が額縁のような役目をして、まるで一幅の絵画のようでしょ。

―――ほんとに美しい!フォトジェニックですね。真正面に石清水八幡宮のある男山が見えるとは贅沢すぎ。

椅子に腰を掛けてみてください。ほら、ちょうど椅子に座った目線にガラスが配置されています。2013年に平成天皇皇后両陛下が聴竹居を訪れた際、こちらにお座りになってこの景色を愛でておられました。

【写真提供:聴竹居倶楽部】

―――こちらは居室ということなんですが、今で言うリビング&ダイニング?

はい。畳の小上がり(こあがり)があるのに注目してください。椅子に座った人と畳に座った人の目線が合うように設計されているんですよ。洋館と日本家屋をくっつけた「和洋折衷」ではなく、こういった住宅スタイルを日本で初めて生み出したのが藤井氏なんです。

【写真提供:聴竹居倶楽部】

―――え!(驚)元祖⁉まさに「日本の住宅」の聖地ですね!さらにスゴイとこありますか?

京都帝国大学で教授として教鞭をとり、環境工学の研究をしていた藤井氏は、江戸時代までしていた日本人の暮らしを科学的に分析します。例えば、冬は日光が入るけど、夏は直射日光が入ってこない部屋を作るために、太陽の動きを観測して、庇(ひさし)の出の長さを計算して決めました。

【写真提供:聴竹居倶楽部】

また、聴竹居の通気の仕組みも優れています。夏は土の中に管を通して外気より3.4度低い冷気を室内に送り込むクールチューブ(赤矢印)は、まさに天然のクーラーです。はじめて聴竹居に訪れたとき夏だったんですが、その涼しさに感動したことを覚えています。

―――駅から聴竹居へ歩いてくる街並みも趣があって、素敵でした。

JRの線路を渡ってから聴竹居までの坂道は、藤井氏が敷いた道です。今でも生活道路として現役なんです。藤井氏が亡くなった後、1万2,000坪にも及ぶ土地は藤井氏が所属していた京都大学の同僚や親しくしていた陶芸家らに土地を切り売りしたそうです。

聴竹居周辺の住宅街が趣ある雰囲気なのは、藤井氏の意思を受け継いだ人々が界隈には多く住んでいたからかもしれませんね。高い塀がなく、生け垣、屋根は瓦ぶき…古き良き日本の景観がここに残っています。

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