年々、注目度が高まっている「EV車(電気自動車)」。ただ、日本ではまだまだEV車の普及率は低く、新車販売全体の1%ほど。それに対し、アメリカのカリフォルニア州ではEV車のシェアがすでに10%を超えているほど普及しているのです。
そこで今回は、メルマガ『【今アメリカで起こっている話題を紹介】欧米ビジネス政治経済研究所 』の筆者が、環境規制が厳しいカリフォルニア州でのEV車事情、そしてEV車シェア拡大に対する問題点などをご紹介していきます。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
環境規制の厳しいカリフォルニア州
サンフランシスコのあるカリフォルニア州は、世界でも最も「環境規制」が厳しい州といわれている地域のひとつです。
自動車の排ガスで世界最初の公害に見舞われた州ということ、そして2022年も非常に長期間熱波が続きましたが、年を追うごとに大規模な山火事が頻発し、地球温暖化による悪影響が非常に大きいということが、とくにそれを後押ししています。
水不足なども非常に深刻で、この10年ほど、ずっとカリフォルニアでの農業ビジネスを見てきましたが、水が足りていた年は2年くらい。
ほとんどの年は干ばつに見舞われ、以前は日本のお米を作ろうとされて移住された日本の農家さんもいたのですが、とても水田などは無理で皆さん撤退されて、いまはほとんどアーモンドとピスタチオの畑に代わっています。
カリフォルニア州におけるEVの普及
このカリフォルニア州ですが、全米で圧倒的にEV車の普及が早い州で、昨年のEV車のシェアがすでに10%を超えています。これは日本のほぼ10倍。
全米のEV車の販売台数中、半分近くがカリフォルニア州で売れている現状で、郊外を車で走っていても5台連続でテスラだとか、3台に1台はEV車だとかそんな状況です。
こういった状況のなかで、8月25日にカリフォルニア州の大気資源局が、2035年までに新車販売は全てZEV(ゼロエミッション)にするという新規制を発表しました。
このZEVは「ゼロエミッション車」と呼ばれる、一切温室効果ガスを排出しない車です。この強いEV化の流れで、EV車のシェアは今後さらに伸びていくことが確実ともいえるでしょう。
EVシェア拡大におけるいくつかの問題点
ただ問題はいくつかあって、ひとつは「電力の問題」です。夜に自宅で充電するケースが多いですが、これが今後の電力不足の問題を引き起こす可能性があります。
いまは職場などで充電できるよう、インフラ整備をするなど補助していく予定ですが、2035年までに現時点の数倍の車がEV車になるわけですから、それば全て充電を行う前提となると電力問題が必ず起こると予想されているのです。
とくに夏場の計画停電や、山火事などがあればなおさらでしょう。そして「電池の問題」もあります。
この1年でアメリカ国内で12カ所以上の電池の新工場の計画が米国内で持ち上がりました。そのなかにはトヨタ、ホンダ、パナソニックなどの日本企業もあります。以前ご紹介しましたが、8月16日にインフラ抑制法が成立しています。
この法案は、EV車1台あたり最大で7,500ドルの税控除を行う代わりに、その車は北米で組み立てられたものであること。そしてバッテリーの半分以上の部品が北米製であること。
さらに原材料のリチウムなどの鉱物も、国務省が懸念のある国と指定する中国やロシアから輸入されているものを使用しているバッテリーは、段階的に禁止の方向に向かいます(2025年から100%控除対象外)。
これで供給問題が起きないのか、いまでさえEV車は注文から1年以上待つのが当たり前となっていますが、これにますます拍車がかかる状態となっていきます。
アメリカのEV化と日本
こういったカリフォルニア州の動きがアメリカのEV化をけん引し、世界のEV化の動きを牽引していくことは確実です。
何カ月か前に3回連続で日本の自動車業界の話をしましたが、先進国のなかで最もEV化に遅れをとっている日本の自動車産業ですが、日本で最大級の雇用を生み出し、かつ日本の産業で最大のグローバルビジネスを生み出しているのも自動車産業です。
高級車が最も売れる北米市場でも、そして世界でも完全に負けとならないように、巻き返していただくことに期待したいと思います。
- 参考:JETRO,Business Insider,日本経済新聞
- image by:Jonathan Weiss/Shutterstock.com
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