繊細でどこか懐かしさを感じるオルゴールの音色と、西洋の自動カラクリ人形・オートマタの世界に没入体験できる「永守コレクションギャラリー」。2023年3月に京都市に隣接する向日市にオープンしたこちらのギャラリーでは、世界的に価値のある作品の展示や、コンサート形式でオルゴールの音色を楽しむことができると聞いて行ってきました! 美しくもちょっと不思議なオルゴールとオートマタの魅力にどっぷりと浸かれる貴重な体験をご紹介します。
※記事中の情報はすべて2024年11月時点・税込表記です。
永守コレクションギャラリーとは?
永守コレクションギャラリーは、オルゴール文化とその関連技術を広く紹介することを目的に「永守文化記念財団」が運営する施設。音楽史や美術史上、希少なアンティークオルゴールやオートマタ、自動演奏ピアノなど347点が所蔵されており、館内の工房では修復作業が行われるなど、“ものづくり”の観点からもオルゴールの歴史と技術を継承する役割を担ったギャラリーです。
来館は完全予約制となっており、企画展毎に入れ替わる貴重なコレクションの数々が無料で公開されています。鑑賞は学芸員さんによるギャラリーガイドツアー形式で行われ、説明を聞きながらオルゴールやオートマタの魅力をじっくりと楽しむことができます。
オートマタの美しくも不思議な世界
まず案内していただいたのは、オルゴールの音色に合わせて動くオートマタが展示されているエリア。
オートマタの歴史は古く、紀元前まで遡ります。しかし、本格的に作られるようになったのは18世紀頃。オルゴールのゼンマイを動力に用いたことで飛躍的に発展し、19世紀中頃から20世紀初頭にはパリのマレ地区を中心に盛んに作られました。当時からオルゴールとオートマタは価値が高い美術品として、貴族などによってコレクションされていたそうです。
こちらは1880年にフランスで作られた「お茶を注ぐ少女」。オルゴールの音色に合わせて、前後左右に首を振りながらポットのお茶を注ぐ少女の姿が印象的です。磁器製の艶やかな顔(ビスクヘッド)と、細部までこだわりを感じる豪華な衣装も見どころです。
「お茶を注ぐ少女」の動画はこちらから▼
https://nagamori-gallery.org/collection/1065/
エンターテイメント性のある作品も数多く作られており、1890年にフランスで作られた「ピエロの手品師」もそのひとつです。右手に持った大きな扇で顔を隠したピエロが再び扇を下げると、なんと顔がなくなっています。あれ?と不思議に思っていると、横の箱からチラリとこちらを覗くピエロの顔が!! 驚きと共に感動してしまいました。
なかには、動物の鳴き声のような音に合わせて動くオートマタもあります。2匹の鳥が交互に鳴く「シンギングバード」は、120〜130年前に実際にいた鳥を剥製にした作品。鳥籠の下部に入った笛にポンプで空気を送ることで、くちばしと尾を振りながら鳥たちが歌っているようなリアリティーが感じられます。
「シンギングバード」の動画はこちらから▼
https://nagamori-gallery.org/collection/792/
多彩な動きを見せるオートマタの構造は、常設されている「椅子の曲芸をするピエロ」で見ることができます。こちらは100年前の作品を模してつくられたものですが、衣装の装飾には当時のスパンコールやガラスのビーズが使われています。
「椅子の曲芸をするピエロ」の動画はこちらから▼
https://nagamori-gallery.org/collection/162/
箱の中にはオルゴールのシリンダーと、首や腕を動かす針金に連動するギザギザとした形状の板などが入ったシンプルな構造。オルゴールのゼンマイを動力に、板の形状でオートマタの動きがコントロールされているそうです。
まるで意思があるように動くオートマタを実際に目にすると、美しくも不思議な魅力に溢れていました。
奥深いオルゴールの歴史と技術に触れる
次に移動したのは、ガラス張りの収蔵庫とオルゴールの歴史が詰まったエリア。
17世紀に“好きな場所で好きな音楽を楽しみたい”という人の願いから自動演奏装置として誕生したオルゴール。時刻を告げるために鳴らしていた教会のカリヨン(音階のある鐘)が、ゼンマイの発明により鋼鉄製の小さな「くし歯」に置き換えられ、時計に組み込んで音楽を流したのが始まりといわれています。
1770年に作られたドイツ製の「グラスベル・カリヨン・ロック」(左)は展示品の中でも一番古い作品。オーストリア製の「シングルティース・ロック」(右)は1820年に作られたもので、枕元に置く小さな時計です。どちらもオルゴールの原型といわれる貴重な作品です。
オルゴールは大きく分けると2つのタイプがあり、最初に誕生したシリンダーオルゴールは職人の手作業で一つひとつピン打ちして作られるため、とても高価なものだったそうです。大型のものになるとオルゴール一台で一軒家が建つといわれるほど!
その後、機械生産によって価格を抑えたディスクオルゴールが作られたことで、個人用のみならず店舗などでも活用されるようになりました。
コインを投入して音楽を聴くジュークボックス型のオルゴールも開発され、一般市民の間にも「憧れの音楽再生装置」として親しまれていきました。
永守コレクションギャラリーは文化庁から登録博物館の認定を受けているため、資料となるアンティークオルゴールやオートマタの複製が認められています。現在もオートマタの複製が進められていますが、これらの人形は服を脱がす前提で作られていないため、中の構造を考察しながら研究が進められているそうです。
そしてこちらのエリアにあるマイスター工房では、専属のオルゴールエンジニアによるコレクションの整備修復作業をガラス越しに見ることができますよ。
数多くのコレクションを保管している収蔵室は、365日24時間、空調管理が保たれた見せる収蔵室。ずらりとならぶ紙の資料やアンティークオルゴールの数々は、オルゴールファンでなくても興奮してしまう空間です。こんなにもたくさんのコレクションがあるのを知ってしまうと、展示室にどんな作品が登場するのか毎回ワクワクしてしまいそう。
収蔵室の中は通常入ることができませんが、企画展の内容によっては入れる機会があるそうなので、興味のある方はHPをチェックしてチャンスをうかがってくださいね。
100年前のピアニストの演奏が聴ける!? コンサート形式で楽しむコレクションの数々
「鑑賞ラウンジ」では、オルゴールや蓄音機などバラエティ豊かなコレクションを椅子に座ってゆったりと楽しむことができます。
舞台上に並ぶ大きなディスクオルゴールは、オルゴールとは思えないほど豊かな音色。電気を使用せず、ゼンマイの動力だけでこんなにも迫力ある音になるのかとビックリしてしまいます。
そして、何よりも驚いたのが「スタインウェイ・デュオ・アート」いう自動演奏ピアノです。
ピアニストの演奏が記録されたロールペーパーをピアノにセットすると、演奏者のペダリングやアクセントなどを忠実に再現した演奏が流れます。
ギャラリーが保有するロールペーパーは1000本程あり、ガーシュイン本人が演奏する「ラプソディー・イン・ブルー」やゴドフスキーが演奏するショパンの「夜想曲」など、100年前に実在した名ピアニストの演奏を生音で聴くことができます。この感動は是非とも体感していただきたいです!
国内で製造された最新のオルゴール
最後は日本最大のオルゴールメーカー「ニデックインスルメンツ」が製造する最新のオルゴールが鑑賞できるエリア。
こちらでは京都の伝統工芸とコラボした作品や、最新のデジタル技術を駆使した近代的な作品が展示されており、アンティークとはまた違ったオルゴールの魅力に触れることができます。
2024年11月21日(木)〜12月27日(金)には、オルゴールの歴史を大小さまざま名機によるクリスマス楽曲の演奏とともに紹介される「冬の特別企画 アンティークオルゴールが紡ぐクリスマスの調べ」が開催されます。期間中は関連イベントとして、コンサートやオルゴール付きのクリスマスツリーを作るワークショップなども行われるので、この機会にぜひ「永守コレクションギャラリー」に出掛けてみてくださいね。
■■INFOMATION■■
永守コレクションギャラリー
場所:向日市森本町東ノ口1番地1ニデックパーク
時間:10:00~16:00(HPより要予約)
休み:水・土・日曜、祝日、お盆、年末年始
料金:無料
- source:KYOTO SIDE
- image by:KYOTO SIDE
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