ダムの高さ日本一を誇る黒部ダムや国内最古の狭山池ダムなど、全国各地には様々なダムが存在します。地方にあるイメージですが、実は東京都内にもあるんです。
そのひとつを今回訪ねてみました。JR青梅線・鳩ノ巣駅が最寄り駅の東京都西多摩に位置する「白丸ダム」は「魚道」やエメラルドグリーンの「白丸湖」など見所あり。東京探検の行き先におすすめです。
東京の秘境。白丸ダムに日帰り探検
「魚道(ぎょどう)」という言葉をご存知でしょうか? 魚道とは、ダムや堰などにより魚の遡行が妨げられる場所に、遡行を助けるために設けられた道です。
ちなみに、ダムと堰の違いというのは、堤体の高さの違いによるものだそうで、一般的には15mを境にして、15m以上がダム、15m未満が堰と呼ばれるそうです。
そんなダムと呼ばれる施設は、国内に約2890程存在すると言われていますが、その中で魚道を備えたダムは、約30程だそうです(財団法人ダム水源地環境整備センター ダム公報センター調べ)。
そんな数少ない魚道を備えた“ダム”の1つが、東京都内に存在するという事で、現地調査に行ってまいりました。行先は、東京都西多摩郡奥多摩町です。
ここに、多摩川水系の水瓶として名高い小河内ダムの下流に位置する白丸調整池をせき止める白丸ダムが存在します。白丸ダムは高さ30.3m、堤頂の長さ61.0mと、ダムとしては小さな堤体ですが、長さ331.8m、高さ27mという大規模な魚道を備えています。
この規模の高低差を持つダムに魚道が備えられる事は全国でも稀です。魚道の長さとしては、栃木県の中岩ダムが、332mと、同等の長さの魚道を備えていますが、その高低差は、約22mであり、その差は5mもあります。
ちなみに、建設中のサンルダム(北海道)を除くと、国内最長の魚道は、北海道の美利河(ピリカ)ダムに備えられている約2.4kmの魚道だそうです。ここまでの規模になると、魚道というより、川の支流という感じがしてしまいます。
白丸ダムの魚道は、高低差の大きなところに配置された階段式魚道(アイスハーバー型魚道)と、潜孔式魚道とが組み合わされて構成されています。
階段式魚道には、各階に流れに淀みを作るための障害物が設けられています。これは、流れが急な魚道を登る際、魚が休憩できるようにと設けられているものだそうです。
潜孔式魚道には、覗き窓が設けられており、運が良ければ遡上してきた魚を見る事もできるでしょう。ちなみに、白丸ダムを遡上する魚には、ヤマメやアユ、ニジマス、ウグイ、ヨシノボリ、及びイワナなどがいるそうです。
もちろん、白丸ダムの見所は、魚道だけではありません。その魅力の1つが、螺旋階段です。管理棟に、階下の魚道まで続く、長く巨大な螺旋階段が存在するのです。
普段、螺旋階段というのは、あまり見る機会も、上る機会も無いため、この巨大な螺旋階段を見て、下る事は、貴重な体験だと思います。
また、白丸調整池は、その水の色が綺麗なエメラルドグリーンに見える事も、魅力の1つだと思います。水は、反射される光と、透過(または吸収)される光によって、色の見え方が違います。
少量の水では、太陽光の殆どの波長の光が透過するため、その色が認識し辛く、透明に見えます。一方で、濁った水では、入射した光の多くが吸収されてしまうため、暗黒色に見えます。
このため、エメラルドグリーンの水は、波長の長い赤色の光が溶融物質を透過する一方、波長の短い黄色から青系の光が反射されたため、そのような色に見えるのではないかと考えられます。白丸調整池の場合、石灰などの成分が溶融している事に関係があるのではないでしょうか。
白丸ダムは、国道411号線の花折トンネル脇からすぐにアクセスする事ができ、管理棟前には駐車場とトイレが完備されているため、気軽な観光場所として適していると思われます。
また、管理棟では、奥多摩のグルメマップや観光冊子などが無料配布されているため、奥多摩散策をする前に立ち寄る事で、お得な情報を得る事もできるでしょう。
- image by:梅原 慎治
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