東京の街を歩いていると時々目にする、真っ黄色の観光バスをご存じでしょうか。そう、東京観光に行ったら必ず一度は目にする「はとバス」の車体です。
この「はとバス」、実は現在もバブル期並みに利用者数を増やしているとのことですが、その秘訣は一体どこにあるのでしょうか?
今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、その経営戦略の秘密について詳しく解説、分析しています。
手軽さを追求した「はとバス」の戦略
失われた20年を経て、バブル期並みに利用者を増やしている企業を分析します。
● はとバス(総合観光会社)
今回は「はとバス」の観光バス事業にフォーカスをあてます。
戦略ショートストーリー
アクティブシニアなど幅広い層をターゲットに、「運行、商品企画、運営、販売、全て自社で行う体制」に支えられた「多彩なコース、手軽で便利」などの強みで差別化しています。
自分のスケジュールに合わせて、日帰りコース、半日コース、昼コース、夜コースなどを選ぶことができ、効率よく観光スポットを回れることで、顧客の支持を得ています。
分析のポイント
手軽さを追求
「はとバス」と聞いてどのようなイメージを持っていますか? 東京在住の私は、地方や海外から来た方が東京観光する時に使うものというイメージを持っていました。
ですから、黄色い「はとバス」はよく目にするものの、東京に住んでいる自分にはあまり関係がないという認識でした。
しかし、意外にも地元である関東地方の顧客が増えているようです。なんと、国内の利用客のうち、東京を含めた関東にお住いの方が約4割を占めています。なぜ、東京近隣にお住まいの方の利用が増えているのでしょうか。
要因の一つとして考えられるのが、「思い出に残る体験」を手軽にできることがあげられます。最近はSNSにシェアしたくなるような「思い出に残る体験」を求めている方が増えていて、実際にSNSで「はとバス」の東京観光が話題になっているようです。
「はとバス」は、新たな観光スポットを掘り起こすことに力を入れていますし、観光だけでなく、普段は行けないようなグルメスポットもコースに組み込むなどして、「思い出に残るような体験」を手軽にできる機会を提供しています。
この「はとバス」の提供価値は、地方からの観光客だけでなく地元の東京近隣にお住いの方にも魅力的なものとなっています。
つまり、この提供価値が、「利用客の幅を広げる」ことに貢献しているということです。60分や90分などの短時間ツアーを充実させることで、「利用客の幅を広げる」ことにつながっているわけですね。
また、短時間ツアーを充実させている理由として、もうひとつあげられるのが「利用頻度の向上」です。1時間ツアーを体験した方が、満足されればまた利用してみようとなるわけで、しかも、様々なコースがラインナップされていますので、選ぶ楽しさもありますし、利用しようと思った顧客を後押ししてくれます。
宿泊の旅行を毎月いくことは考えなくても、数時間のツアーで「思い出に残る体験」ができるのであれば、毎月、参加される方もいらっしゃるのではないでしょうか。要するに、「はとバス」はツアーを手軽にすることで、「利用頻度を高めている」と言えそうです。
上記のように、「はとバス」は、強みである「手軽さ」を追求する、具体的には手軽に参加できる魅力的な短時間ツアーを充実させることで、「利用客の幅を広げる」とともに、「利用頻度を高める」ことにもつながり、それらがバブル期並みの利用者数の実現に貢献しているわけです。
2020年の東京オリンピックに向けて、東京という街が注目を浴びている中で、「はとバス」が今後どのような取り組みで「はとバス」ブランドをつくっていくのか非常に楽しみです。