美味しいパンで町おこし…障害者支援の枠を超えて広島で人気拡大

これまでジモトのココロ編集部では、日本各地の様々な町おこしのために活動する人達を紹介してきました。今回紹介するのは広島県呉市安浦町で活動するパン屋「BROTO」です。

BROTOを運営しているのは、障害者支援を目的に活動するNPO 法人「地域ネットくれんど」。なぜ、福祉団体がパン屋経営を始めたのでしょうか?発起人である「地域ネットくれんど」の大本さんにお話を伺ってみました。

パンと雑貨のお店 BROTO

以前にTRiP EDiTORでも紹介した「ウサギの島」こと大久野島の対岸にある竹原市忠海町で待ち合わせた友人がどうしても行きたいパン屋があるという。

場所は呉市安浦町。忠海町から車を飛ばして約 30 分。着いたのは JR 安浦駅から徒歩約 5 分、野呂川沿いにある「パンと雑貨のお店BROTO(ブロット)」。

BROTOとはポルトガル語で「新芽」の意味

一軒家を改装して作られたこちらのパン屋さんは大人気で、何回か訪れている友人は目当てのパンがあったらしく、「これこれ」とさっそくトレーに乗せている。なるほど、午前中にも関わらず、かなりのパンが売り切れている!

お値段を見ると、ほとんどが 100 円代でかなり良心的その場でカスタード+ホイップのクリームをつめてくれるクリームホーンなんて 140 円。東京の某店だったら 140 円以上はする。

クリームホーン
クリームをその場で入れるクリームホーン

BROTO は障害者の自立支援を行っている NPO 法人「地域ネットくれんど」が運営している。2012 年にオープンしたお店の立ち上げから関わっているのは、くれんどの職員である大本紀子さんTV 番組『ヒルナンデス』の第 3 代レシピの女王に輝き、ナチュラルフードコーディネーターの資格を持つ。

「もともと、職場のなかで、障害をもった人が働けるお店を作りたいと思っていました。安浦町には焼きたてのパンが食べられるパン屋がなく、パンが大好きな私は『作るなら絶対にパン屋さん!』と思っていて、念願かなって BROTO を出店することができました。オープンにあたり、お店の内装からメニュー、店舗全体のデザインに関わりました。今ではそれぞれの現場スタッフがしっかり考えてやっているので、パンの味見をして感想を言うくらいです」

と大本さん。


エビフライタルタルソース
良心的な値段で販売

友人がラスイチ(ラスト 1 コ)でゲットできたパンに使われていた手作りベーコンなど、ブロットには安浦町で食の仕事を行う人たちによる「こだわりの味」とコラボしたパンも並ぶ。

「地元のお醤油屋さんのお醤油、手作りハム屋さんのベーコン、農家さんの季節の果物を加工して、ピザのトッピングやパンの具材に使っています。自社の畑部門(ここも障害のある方と一緒に働いている)で採れた野菜も、日替わりピザの具材として彩を添えています。パンを通して地元の人との繋がりが持てたり、交流の場になるようなものを目指しているので、なるべく地元のものを使っています。また、町おこしになるようなパンも試案中です」

と話す。

テリヤキチキンのピザ

あいにく、この日のピザはテリヤキチキンしかなかったが、自社が運営する畑で収穫した野菜が商品に使われるとは、なんと有機的な循環なのだろう

呉おこし

お店にはパンだけでなく、柑橘系のフルーツを使ったシロップやクッキーも。オシャレなパッケージが目を引くのは「呉おこし」。地域のお土産として喜ばれそうなこのお菓子にも畑で作った野菜が使われる。

NPO 法人「地域ネットくれんど」は元々、障害者の自立支援や高齢者の介護事業を展開していたが、今ではその枠を越えて安浦町内で BROTO やカフェ「豆ナ茶屋」といった食のサービスを通じて地域の人たちに親しまれている。それらは「パンを買いに行きたい」という私の友人のように、安浦町に人を呼び込むきっかけになっているようだ。

Page: 1 2

TRiP EDiTOR編集部 :TRiP EDiTORは、「旅と人生をもっと楽しく編集できる」をコンセプトに、旅のプロが語りつくす新しい旅行メディアです。