今年も桜の季節になりました。都内では3月中旬から4月上旬までが桜が見頃です。街中がピンク色に染まるこの時期、黄色の花が咲く「鬱金の桜」をご存知でしょうか?都内でも珍しいその桜が咲くスポットをひとつご紹介します。場所は東京の世田谷区です。
ピンクだけじゃなかった。珍しい黄色の桜
「桜色」という言葉があるように、どの桜も薄いピンク色をしているものだと思っていました。しかし、ピンク色以外の桜も存在していたのですね。その驚愕の事実を知った場所は、1951年(昭和26年)に建立された世田谷山観音寺(通称「世田谷観音」)。
東急田園都市線「三軒茶屋」駅と東急東横線「学芸大学」駅の中間地点にあるこじんまりとしたお寺は、東京学芸芸大学附属高校の向かいにあり、一歩足を踏み入れると、こころ安らぐ場所として、地元では人気のお散歩スポットです。
さて、境内にある「鬱金(うこん)の桜」こそ、黄色の花をつける桜。淡黄色に咲いた花は、散り際になると花弁が紅くなります。そして、案内板でひときわ目を引いたのは「拝むとお金に憂鬱にならない」の文字。この桜を拝まないで帰るわけにはいかない!
おや、周囲も立ち止まって鬱金の桜をうっとりと眺めている。さては皆、ココロの中では同じことを考えているにちがいない!そして(なりふり構わず)手を合わせるのでありました。
この鬱金の桜、調べたところによると、日本で27本しか存在が確認されていないとか。サクラの品種の中でも、唯一黄色の花をサクラでもあり、とにかく稀少な種なのです。
またソメイヨシノの花弁が5枚に対して、鬱金桜は花弁数が15~20枚ほどの大輪の八重咲きであることが特徴。ちなみに、この名前の由来となっているショウガ科ウコン属の多年草ですが、もともと中国では皇帝だけが身に着けることができる「高貴な色」とされてきました。
桜の季節を迎えると世田谷観音の境内は鬱金の桜の他、ソメイヨシノや枝垂桜などがいっせいに咲き、そこここで満開の桜の美しさに嘆息せずにいられません。
不動明王をまつるお堂の脇にある池には「夢違観音(ゆめちがいかんのん)」の像が配されています。奈良の法隆寺にある夢違観音(87cm)を模写した、この観音様は「悪い夢を良い夢に変えてくださる」という言い伝えが。桜の花びらが風に吹かれ、観音さまに向かって舞い降りていく様は本当に美しい!
この観音様の向かい側に立つ松は「三鈷(さんこ)の松」といわれ、葉が3本に分かれた落ち葉を持っていると良い事があるといわれ、参拝された方がよく落ち葉を探されている姿を見かけます。
参拝前後にお姿を拝見できる門の両脇に立つ仁王像は都内最古といわれ、平安時代の作。仁王門には手を打つと鳴く「鳴き龍」も。
墓地のないこのお寺は地元の人たちにとって、「プチ瞑想会」や毎月第2土曜日の6時~8時30分は朝市が開かれたりと、コミュニティーの場になっています。お花見の時期、珍しい鬱金の桜をはじめとする、満開となった桜の光景はココロに染み渡りますよ!
- image by:御田けいこ
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