富山にあるスタバはなぜ、今も「世界一美しい」と言えるのか

「世界一」という「誤解」を信じ込ませるお店の魅力は否定できない

富山美術館の屋上から撮影した富岩運河環水公園の全景。写真の右奥に見えるビル群が富山駅(北口)周辺のにぎわい。

とはいえ、富山環水公園店のすごさは、「世界一」と聞いて訪れた人を、「なるほどね」とどこか納得させてしまう魅力が備わっている点だと考えられます。

そもそも富山環水公園店は、立地する公園そのものが見事な設計で作られています。埋め立てられる運命だった運河を生かした県立都市公園で、国際的な連携組織World Urban Parksの「Benefits of Urban Parks」流に言えば、都市における公園緑地の機能を教科書通りに果たしています。

少し前までは「スターバックスしかない公園」とやゆする声も一部にありましたが、2018年に敷地内に富山県美術館が誕生してから、同公園の評価は決定的に覆ります。市民の訪問も増え、各種のコミュニティーも生まれ、県外からの観光客もかなり目立つようになりました。

かつては空き地が目立った公園周辺には、家や商業施設も次々と建ち始めています。こうした魅力的な公園に立地しているというロケーションそのものが、「世界一」という評価にある種の説得力を持たせているのですね。


周辺の景観に配慮した開放感ある店舗デザインも魅力

テラス席にはペット同伴可で、リード用のフックも用意されている

立地を生かした店舗設計も、富山環水公園店を「世界一」と納得させる理由の1つになっていると考えられます。

スターバックス誕生の経緯としては、県が公園に出店する飲食店を公募したところからスタートします。6社からの照会があり、その中でスターバックスコーヒーが、運河を一望できるガラスの大開口部と、広々としたテラス席を持った軽量鉄骨平屋建ての店舗デザインを提案して、採用されました。

米スターバックスの公式ホームページ上に掲載されたストアデザインの考え方を読むと、同社は環境への配慮を重んじており、環境への配慮がストアデザインや工法、建材、照明などに影響を与えると書かれています。

このポリシーは2008年当時も変わっていないはずで、環境への配慮は当然、景観への配慮につながり、景観への配慮は当然、景観を生かした店舗デザインにつながったのではと考えます。

事実、富山環水公園店は公園の景観に見事にマッチしています。平屋建ての建物は隣接する桜並木と似たような高さ(スカイライン)になっていますし、店舗に設けられたテラス席のウッドデッキも、公園の運河沿いに設けられたウッドデッキと統一された印象があります。

屋外のひさしに、店内の天井と同じ木目の板を使い、店内外のつながりを演出している点も魅力的です。巨大な大開口部からは運河が一望できますから、運が良ければ店内に居ながら、水鳥が魚を狙って水面に急降下するダイナミックな瞬間も目撃できます。

富山県に宿泊で訪れたら、休日の昼間など長蛇の列ができる時間帯を避け、夜や朝一に出かけて、静かな雰囲気の中で「世界一」の魅力を満喫してみてくださいね。

参考: Store Design – Starbucks Corporation

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