ダム湖から復活した、船でしか行けない秘湯「大牧温泉」

湖畔に再建された大牧温泉 image by : 砺波市商工観光課フォトライブラリー

冬の庄川渓谷 image by : 砺波市商工観光課フォトライブラリー

もちろん船でしか行けないとうたいながら、地元の人も苦笑いしてこっそり教えてくれるように、大牧温泉には物理的に道路が通じています。国道156号線から長崎大橋を渡り、車一台分の幅しかない細い道を進めば、大牧温泉にたどり着くルートは確保されているのですね。

2018年9月執筆時点では、大牧温泉の目の前に広がる湖に、上流の岐阜県に降った豪雨の影響で大量の土砂がたまっています。水深が浅くなり船が大牧温泉の目の前の船着き場に接岸できないため、現在は大牧温泉の下流400mのところに仮設の船着き場を設けて、その船着き場からマイクロバスで往復しています。

さらに仮設の船着き場が設けられる前は、小牧ダムの船着き場からマイクロバスが上述した林道を通り、大牧温泉との間で往復していました。要するに、車での往復も物理的には可能なのです。

しかし、この林道は厳密に言えば、途中から関西電力などの私有地になるため、一般の車の乗り入れは禁じられています。冒険心たっぷりにこの道を自家用車で探検する人も居ますが、法的にはNGです。やはり一般の宿泊客にとって大牧温泉は、船でしか行けない秘湯なのですね。


何もない秘境の温泉地では、何もない時間を楽しみたい

写真はイメージです

大牧温泉のサービスについて、最後に触れておきたいと思います。同温泉は庄川のダム湖の湖畔に、急斜面の山を背に作られた一軒宿です。当然ながら敷地が限られており、建物も長細くできていて、フロントから奥へ、奥へと進む感じになっています。その意味で廊下や内風呂、露天風呂の広さに多少、窮屈さを感じるかもしれません。

また、同地は庄川峡の大自然の中にあります。当然ですが虫の存在も、時期によっては気になるはず。周囲には散策できるような温泉街もありませんし、コンビニエンスストアも当然ありません。館内の売店の営業時間も短いです。

庄川峡の奥地にある一軒宿に何を求めるかで評価は変わってくると思いますが、客室は過不足なく奇麗で、窓も広く湖面を眺められる絶好の空間になっていますし、お風呂も広さ以外を考えれば、お湯もしっかり熱くて、なめると少し塩味が感じられる満足の天然温泉です。

食事もスタッフの接客も、超一流と言えるかどうかは別として、峡谷に孤立した一軒宿と考えるとかなりレベルが高いと言えます。到着時には船着き場でスタッフが手を振って出迎えてくれますし、帰りも船着き場で見送りしてくれます。その光景はちょっと心動かされるはず。

やはりほかでは味わえない温泉体験が大牧温泉ではできますから、過度なサービスを求めてあら探しするようなスタンスでなければ、大いに満足できるはずですよ。

image by: Shutterstock.com

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