日本産は次元が違う…海外でも絶賛された日本ウイスキーの聖地を巡る

うまい酒は旅をしない」という言葉がありますよね。世界的な作家の村上春樹さんも著書の中でこの言葉を紹介し、お酒が育まれた環境を離れると、輸送や気候の変化、あるいは飲む側の心理的な問題で味わいやアロマに変化が生まれるのではないかと書いています。なるほど、日本各地に蔵元がある日本酒は現地で飲む方がおいしく感じますし、国内生産が盛り上がりを見せるワインも産地で飲む方が味わいは増す気がしますよね。もちろん、ウイスキーも一緒のはず。

特に日本のウイスキーは海外でも絶賛されていて、多くの賞を受賞しています。なかには品薄になってプレミアム価格で取引されている銘柄も。そこで今回は、現役のバーテンダーの方にウイスキービギナーが訪れておきたい日本の蒸溜所を5つ挙げていただいたので、ウイスキーの産地を巡る旅を紹介していきます。

お話を聞いたのは、東京ステーションホテルなどのホテルでバーテンダー業務を15年以上行い、現在は埼玉県川越市に『Bar Hoskey』を構えるオーナーの小久保直人さん。大人のたしなみとしてはもちろん、蒸留所見学に興味のある方はぜひ参考にしてみてくださいね。

蒸留所を巡る旅その1:北海道「余市蒸溜所」

余市蒸溜所 image by: アサヒビール

ウイスキーのビギナーが訪れたい、日本の蒸溜所を小久保さんに聞く前に、簡単にウイスキーの歴史をおさらいしておきましょう。

そもそも日本に、いつウイスキーが入ってきたのでしょうか。そのあたりの経緯は井上宗和著『世界の酒6 日本のウイスキー』(角川書店)など数々の書籍に詳しく、ざっくりと言って明治維新以後。最初はスコットランドのウイスキーと安いアルコールを混ぜた混成ウイスキーなども飲まれましたが、やがて日本産のウイスキーが誕生します。その歴史的な背景には2人の偉人が大きな役割を果たしており、そのうちの1人、連続テレビ小説『マッサン』(NHK)でも描かれた竹鶴政孝の作った蒸留所が、ニッカウヰスキーの余市蒸溜所になります。

「余市?」

と北海道の地理に詳しくない人は、場所がピンとこないと思いますが、余市(よいち)とは札幌の西、小樽を越えて国道5号線をさらに西に進むと到着する海浜の港町です。

余市のえびす岩 image by: tkyszk / Shutterstock.com

ニセコ積丹小樽海岸国定公園にも指定される積丹半島の根元で、国道沿いに南下すると、倶知安町にたどり着きます。筆者も取材などで繰り返し訪れていますが、空の色、海の色、風の吹き方などが、確かにスコットランドのハイランド地方に似ていると言えば、似ている気がしますよね。その余市の自然環境を気に入り、

ニッカウヰスキーの公式ホームページによると、余市蒸溜所の見学ツアーでは試飲できるお酒として、『シングルモルト余市』があるといいます。


ニッカウヰスキーの公式ホームページによれば、こちらも無料の見学を受け付けており、有料にはなりますがテイスティングセミナー付きの見学会もあるのだとか。小久保さんによれば、

「宮城峡のウイスキーは、華やかで上品でマイルド」

といった個性があると言います。「自然がウイスキーを作る」という言葉を先ほど引用しました。余市よりも北緯が低く、北海道と比べてやや気候が穏やかな東北の、しかも奥羽山脈の東側斜面という自然環境がもたらす特徴なのかもしれませんね。周囲の豊かな自然を満喫しながら、その環境で育まれたウイスキーを楽しみたいです。

  • 宮城峡蒸溜所
  • 宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地
  • 022-395-2865
  • 定休日:定休日:8月24日(金)、12月24日(月)~2019年1月7日(月)
  • 9:00〜16:30
  • https://www.nikka.com/distilleries/miyagikyo/

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