みなさんは今までの人生で、いくつの世界遺産を周りましたか?「世界遺産に騒ぐ国民は日本人だけ」といった見方も一部にありますが、やはり世界遺産という言葉の響きには、どうにも無視できないロマンが感じられますよね。
そこで今回は北陸在住の筆者が、冬だからこそ訪れたい富山県の世界遺産「五箇山(ごかやま)」を紹介したいと思います。冬用タイヤを装着した自動車で、ぜひとも雪深い五箇山に足を運んでみてくだいね。
5つの「谷」の総称が五箇山。でも、五箇山という住所は存在しない!?
1995年に岐阜県の白川郷とともに世界遺産に登録された、富山県の世界遺産「五箇山(ごかやま)」は、10年前の2008年に東海北陸自動車道が全線開通して、富山や金沢など北陸からはもちろん、名古屋など東海からもアプローチしやすくなりました。
そもそも五箇山とは、どういった場所なのでしょうか?関東から北陸に移住した筆者が友人や知人に「五箇山って知っている?」と聞くと、意外にも認知度の低さを痛感させられます。
ただ、「アルファベットの「A」のように、急こう配のかやぶき屋根の民家が、雪深い山間に寄り集まっている場所」と解説すると、何かを思い出してくれる人も少なくありません。テレビ番組や雑誌・ウェブ、鉄道会社のポスターなどで紹介されている様子を、どこかで見た覚えがあるのかもしれませんね。
五箇山は富山県の外縁部に位置していて、西は石川県、南は岐阜県と県境を共にしている山深い土地です。昔は「五ケ山」とも表記していましたが、意外にも由来は、
<赤尾谷 上梨谷 下梨谷 小谷 利賀谷の五つの谷の総称>(石崎直義『秘境 越中五箇山』北国出版社より引用)
だったと言います。山ではなく谷なのですね。なぜ谷が山と表記されたのかについては諸説あるようですが、「山」という象形文字は深い谷間も文字の中に持っている点を考えると、不思議ではないのかもしれません。
実は、五箇山という住所は存在しません。同地を江戸時代に支配していた加賀藩が明治時代の廃藩によって消滅するとともに、五箇山という呼び名も廃止されたと『角川 日本地名大辞典 16富山県』に書かれています。五箇山はあくまでも周辺の通称に過ぎないのですね。