まるで地下神殿。栃木「大谷資料館」でRPGの世界感にどっぷり浸る

高い天井面も大谷石の層で覆われていることからすると、上から掘った方が効率的に石を得ることができると思えるのに、わざわざ洞窟のようにして掘っていたのは不思議ですよね。

幻想的な空間であるために、ライトアップされたアート作品が映えますね
生け花のような巨大なオブジェ。何を表しているのでしょうか

実は大谷石も採掘当初は、露天掘りのようにして掘っていた場所がほとんどだったそうです。しかしこの方法だと、1つの採掘面をすべて掘らないと次の採掘面が現れません。

石の層はすべてが商品になる層ではなく、綺麗な層と汚い層(ミソ)が分かれており、露天掘りでは汚い層に当たった際、その層をすべて掘り出さなければ、商品になる層の採掘に取り掛かることができないのだそうです。

限定公開されている教会ゾーンです。立木は本物のようでしたが、使用の度に整備されるのでしょうか
実際に結婚式を行う事もできるみたいです。この場所のほかにも、いくつか祭壇のようなゾーンが存在するみたいです

そんななかで取り入れられたのが、いわゆる坑内掘り(専門的には垣根掘り)という、洞窟のようにして石を切り出して行く採掘形態だったそうです。

この採掘形態を利用した場合、1カ所を露天掘りで掘り進んだ後、綺麗な石の層に当たったところで、その層に沿って掘り進む事ができ、効率の良い採掘作業が可能になるのだそうです。不思議な空間にも、ちゃんとした理由があったのですね。

オレンジの光に包まれた空間。カラフルなライトアップが映えるのは、岩肌が白いからでしょう
巨大空間を下側から見上げた図。ここは採掘した石を運び出すトラックが通った道のようです

大谷資料館の地下空間はライトアップの妙もあり、巨大地下神殿と言っても過言ではないような、不思議な雰囲気を醸し出しています。このため、さまざまな映画やドラマ、イベントなどの舞台や会場として利用されています。

建築資材の遺構でありながら、時代の流れに置き去りにされず、時代のニーズに合わせた利用価値が見出された空間となっているのですね。

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