「とりあえず生」が居酒屋の合言葉のように使われる日本ですが、実はキリンビール大学が2016年に公表した「世界主要国のビール消費量」で見ても第7位に入るほど、世界的なビール大国です。
さらに近年のクラフトビールブームもあり、ご当地ビールも多数登場しています。また日本の「居酒屋」が一つの文化として海外にも知られるようになり、日本のビールを片手に居酒屋を楽しむ外国の方もよく見かけるようになりました。
このように、日本人のみならず海外の方にも親しまれている日本のビールですが、実際に、いわゆるビールの「本場」では、どのように思われているのでしょうか。
そこで今回は、ビールの種類は約5,000、全国各地に醸造所が約1,200もあるビール大国・ドイツ出身で、日本滞在歴10年になるホフマンさん(仮名・40代)に、「ドイツビールと日本ビールの違い」「好きな日本のビール」、さらに「美味しいビールが飲めるお店」について、話を伺いました。
意外と知らない、ドイツのビール文化
日本のビールについて聞く前に、そもそもドイツ人にとってのビールはどういったものなのか、その文化や不思議なウワサについて伺いました。
本場・ドイツのビールは「ぬるい」ってホント?
筆者(以下、筆):よく聞かれるかと思うのですが…ドイツのビールがぬるいって、本当ですか?
ホフマンさん(以下、ホ):それね、めちゃくちゃよく聞かれます(笑)。まず「ぬるい」と感じたことはないかな。それぞれのビールに適した温度になっていて、涼しい室温と変わらない、つまり常温で楽しむビールもあるから、ぬるいと感じる人がいるのかもしれないね。
そもそも、ビールは製造時の発酵種類によって大きく「エール」と「ラガー」に分けられ、さらにラガーの中に「ピルスナー」というスタイルがあります。そしてアサヒスーパードライやサッポロ黒ラベルなど、日本の定番ブランドのほとんどがピルスナーなんだとか。
このピルスナーは爽やかな喉越しが特徴で、冷やすとより喉越しの良さがわかりやすく感じられます。湿度の高い日本の夏、ビールでスッキリとしたい日本人には、キンキンに冷えたピルスナースタイルのビールが適していたのかもしれません。
筆:特に「ぬるい」って訳ではないんですね。ではホフマンさん、実は日本のキンキンに冷えたビールがあまり好きじゃない…とか?
ホ:うーん、実は最初は「こんなに冷やしたら、味がわからないだろ!」と思ったんです。
でも、日本を訪れてしばらく経ったころ、日本人の友だちと真冬に秋田の旅館に泊まったんだ。そのとき彼が「温泉行く前に仕込んでおこう」っていって、窓辺に積もった雪の中へ、缶ビールを突っ込んだんだよね。
それがすごく日本らしい風情を感じて、キンキンに冷えたビールもいいなと感じたんだ。それに、温泉に入った後はとにかく冷たいビールが最高!
筆:温泉の後はとにかく冷たいビール、これは万国共通なのかもですね。
ホ:ちなみに、ドイツにはホットビールっていうのもあるんだよ。風邪を引いたときとかに飲む、体がすぐにポカポカして温まる魔法のドリンクだね。
筆:ホットワインみたいな感じでしょうか。どういうビールを使って、どのように作るんですか?
ホ:日本の定番ビールを温めると苦く感じると思うから、香りと風味が強い、例えばリンゴとか果物を使ったエールビールがおすすめ。家庭によって違うみたいだけど、うちはそこにシナモンとショウガ、ハチミツを少しだけ入れるね。