那須温泉郷や奥飛騨温泉郷など、全国各地には「温泉郷」とつく場所がたくさんありますよね。片山津温泉や山代温泉などを有する加賀温泉郷もそのひとつ。
その加賀温泉郷のなかには、全国的にはあまり名が知られていないけど、長い歴史を誇り、さらにとてもユニークな「粟津(あわづ)温泉」という温泉地があるのです。
そこで今回は粟津温泉の魅力をご紹介していきますので、温泉旅の参考にしてみてくださいね。
よく見る「◯◯温泉郷」ってどういう意味?
温泉郷という漢字を道路標識などで見かけて、「何て読むんだろう」「温泉地とは何が違うの?」と疑問に思った瞬間はありませんか?
実は温泉郷の読み方は「おんせんきょう」、「おんせんごう」と2通りあり、意味に関しては実は正確な定義がないのだとか。
それでも漢字辞典の『漢字源』(学研)を調べると、「さと、ふるさと。都市に対して、いなかのこと」と書かれています。
その言葉からも分かる通り、一般的な使用方法としては、いくつもの温泉地が密集した、田舎にある温泉エリアといった雰囲気で使われています。
今回、紹介する北陸最古の温泉地「粟津温泉」も加賀温泉郷にある温泉地のひとつ。片山津温泉、山代温泉、山中温泉といった名だたる温泉地と一緒に、温泉エリアを作っています。
奈良時代の718年に開湯した加賀の名湯「粟津温泉」
粟津温泉は加賀温泉郷の中でも、少しこぢんまりした温泉地です。
例えば加賀温泉郷の中でも片山津(かたやまづ)温泉は、源泉が柴山潟という、海跡湖(注1)の中にあるため、温泉街が湖に面しており、展望の良さが楽しめます。付近には愛染寺という恋愛成就のパワースポットも人気のため、若い女性の姿も多く見かけます。
また、山代温泉は九谷焼の名地で風情ある温泉街の魅力で人気ですし、山中温泉は松尾芭蕉も愛した北陸屈指の温泉地です。
石川県の地方紙『北國新聞社』が出版する『これが新しい温泉の選び方 新 名湯図鑑』でも、先ほどの片山津温泉と一緒に、山中温泉は北陸の「特選の温泉地」に選ばれています。
こうした立派な温泉地の近くで、粟津温泉は規模的にも知名度的にも、若干ですがこぢんまりとした印象が現状ではあります。しかしこの場所には、他の温泉地にはない歴史とユニークさがあります。
実は粟津温泉の開湯は718年。
言い換えれば加賀温泉郷のなかでも歴史が圧倒的に長く、遷都で藤原京から平城京へ都が移された8年後に、温泉地としてスタートを切っているのですね。
ギネス世界記録にも登場した温泉宿「法師」
現在、世界で最も古い歴史を誇る温泉宿として「ギネス世界記録」に載っている宿は、山梨県の西山温泉にある「慶雲館」という旅館になります。
この宿の創業は705年。大宝律令が出された数年後です。もはや歴史の教科書の話題ですね。
しかし2011年に慶雲館がギネス世界記録に認定されるまでは、別の宿が「世界最古の宿」として知られていました。ギネス世界記録の公式ホームページにも、
<The second oldest hotel is also in Japan.>(Guinness World Recordsの公式ホームページより引用)
「2番目に古いホテルも日本にある」と書かれています。
この場合の「2番目に古いホテル」が、まさに粟津温泉にある「法師(ほうし)」という温泉宿でした。
言い換えれば、慶雲館が申請をする前までは、粟津温泉の法師が世界最古の宿として知られていたのですね(実際には兵庫県の城崎温泉にも「千年の湯 古まん」という創業717年の宿もあります)。
今でこそ世界イチの歴史の長い宿の座は、明け渡してしましました。しかし、北陸最古である点には間違いがありません。
加賀温泉郷の中でいえば、山代温泉も725年に開湯し、山中温泉も同じくらいに温泉地としてスタートしています。長い歴史という点に関しては、決してどちらも負けていません。
ですが、どこが北陸最古かといえば粟津温泉、さらにいうと粟津温泉の法師という宿になるのですね。
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