以前、KYOTO SIDEで「あじさいの名所」としてご紹介した福知山市の丹州観音寺。ここにある展望台の名前がユニークと話題となっています。
その名も「なげきの展望台」。いったい誰が、どんなことを嘆いていたのでしょうか。併せて、あじさいの季節に訪れたい、丹州観音寺のスポットなどもご紹介します。
京都市内から車で約90分、福知山市東部にある丹州観音寺
関西を代表する「花の寺」
話題のB級グルメ「ゴム焼きそば」や2020年の大河ドラマの舞台としても注目浴びる福知山市。丹州観音寺は、市の東部にある奈良時代の720(養老4)年に創建された丹波地方を代表する古寺です。
1300年近くの歴史があるこのお寺は、「関西花の寺二十五カ所」の第一番札所としても有名です。
特に6月から7月にかけては、約100種、1万株ものあじさいが咲き乱れることから「あじさい寺」としても知られ、毎年多くの参拝客が訪れています。
「なげきの展望台」で嘆いていたのはだあれ?
標高約80mの場所にある「なげきの展望台」
今回ご紹介する展望台はお寺の裏山の中腹にあり、もともと電力会社の鉄柱が立っていた場所を約10年前に整備したものなのだそう。
標高約80mと決して高いとはいえませんが、「それでも展望台なのだからきっととても気持ちいい景色なのだろう」と多くの参拝客が足を運びました。
しかし、たどり着いた先には雑木林が生い茂り、遠くの山々はおろか近くの景色すらまともに見ることができませんでした。
「せっかく登ったのに…、何も見えへんやないかー!!!」
という参拝客の嘆きは、山の麓にいる住職の小籔実英さんの耳にまで届き、「がっかりさせてしまって申し訳ない…」と胸を痛めていました。
そんな参拝客の嘆きを度々聞いていたある時、住職の頭にこんな言葉が浮かんだそうです。
「苦労を乗り越えた先に何かあると期待をしてしまうが、『何もない』というのも人生。でも、『何もない』とは『無事』なこと。自然災害や戦争に遭うことなく平穏に生きられるのが一番の幸せじゃないか。」
詩や絵画などでも知られる住職。早速、言葉を文章にまとめ、展望台に掲示しました。
すると参拝客から嘆きの言葉を耳にすることが段々減っていき、今度は「80を過ぎてこの展望台までたどり着けたことが嬉しかったです!」「今度生まれる子が『無事』に育ちますようにとお祈りしました。」など、今まで聞くことのなかった前向きな言葉をかけてもらえるようになったそうです。
参拝客が道筋をつけてくれた「なげきの展望台」
住職自身にとっても「なげきの展望台」を通じて、様々な発見や出会いが生まれたと語ります。
「たとえば、展望台へと続く108段の階段も私が意識して作ったんじゃなく、たまたま段数を数えてみたら『108』、つまり煩悩や除夜の鐘の数と同じだったんです。そのことを知ったときは、ご縁だと感じました。展望台が生まれる道筋をつけていただいた参拝客の方はもちろん、景色が見えるように木々の枝を剪定してくれた方や、お地蔵様を寄進していただいた方…。多くの方々がいたからこそ、今の『なげきの展望台』があると感謝しています。私にとっては『喜びの展望台』ですね。」(小籔住職)
さて、「なげきの展望台」から見える景色は、一体どんなものなんでしょうか。一体どんな言葉を住職は掲示板に書いたのでしょうか。
ぜひ丹州観音寺まで足を運んでほしいので、ここでは、敢えてどんな景色が見えるかは秘密にしておきましょう。
住職の言葉を読んで思いを巡らせたり、祠をお参りしたり、無事であることを祈る絵馬を奉納したり…。
静かな時の流れを感じながら、平穏無事に過ごしていることの素晴らしさを実感することも、時には必要なのかもしれません。ぜひ丹州観音寺を訪れてほしいと思います。
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