正月、お月見、お彼岸など、日本古来の行事に欠かせない食材である「お餅」。
美しい白色と、吸い付くような食感には唯一無二の存在感がありますが、何かの節目や縁起、祝賀祭など、行事の際に食べることが多く、日常ではあまり馴染みがないのが実情ですよね。
地域によっては親戚一同で集まった際に、近所の方々と親睦を深めるという意味でもみんなでお餅をついたりする風景も見られましたが、現代ではスーパーで手に入る既製品で代用している家庭がほとんどではないでしょうか。
一方で、クラフトビールやクラフトコーヒーなど、日本でもいたるところで製造工程における「クラフトマンシップ(ものづくり魂)」を謳った食品が注目を集めているのも事実。
そして、日本の餅業界にもそのムーブメントがきているようです。
それが、2019年11月6日よりクラフトマンシップあふれる新時代のお餅を生み出すべくスタートアップ企業が集結。
日本屈指の米どころである、宮城の餅メーカー「笠原餅店」と、最高品質の食用花「EDIBLE GARDEN」や、アイスクリームブランド「FRAGLACE」などで食の理想を掲げてきたスタートアップ企業、「dot science株式会社」がタッグを組み、そこで生まれたのが、新たなブランド「THE OMOCHI」です。
今回dot science株式会社が手を組んだ笠原餅店は、祖父母の代から創業60年あまり続いている餅店です。
笠原餅店の特色は、なんといってもその製造方法にあります。餅製造のうち約99.9%がガス化していると言われるなか、笠原餅店では釜戸と薪火で蒸した餅米から餅づくりをするという、絶滅寸前の伝統製法。これにより、笠原餅店にしか出せないとろみと、つるっとした喉越しを実現しているのだそう。
また、できる限り笠原家で育てたもち米を使い、釜と薪でていねいにもち米を蒸す。そんな手間も時間もかかる製法にこだわり続けている点こそも、笠原餅店がクラフトマンシップにあふれる理由のひとつだと言えそうですね。
今回、発表されたラインアップは、「プレーン」(1,200円)、「玄米」(1,200円)、「海老」(1,500円)、「くるみ」(1,400円)、「豆」(1,400円)からなる5種類の切り餅。
全て10枚入りで、シンプルかつスタイリッシュなパッケージに包まれているので、自身で楽しむのはもちろんのことギフトしても喜ばれそうですよね。
切り餅1枚当たりのサイズは、縦6.5cm×横4cm×厚さ1cmほどのコンパクトさ。手づくりのため、多少の誤差があるそうですが、ハンドクラフトならではの温かみが感じられます。
また、双方がタッグを組むにあたっての目標のひとつが、「美味しい餅づくりを次代に継承すること」。
職人技に価値をつけるだけでなく、その職人技がきちんと継承していけるだけの価格で販売することも今回のブランド設立の際に重視したポイントなのだそう。
「THE OMOCHI」では、そんな手間ひまかけて作られたお餅をベースに、従来のイメージを更新する新たなアレンジレシピをオフィシャルサイト上で紹介する取り組みも行なっています。
「お餅のシナモンハニーバター」「お餅のキャビアのせ」「オリーブオイルと塩」といったワインにぴったりなおつまみや、ユニークなオリジナルお餅スイーツなど、「餅は餅屋」と言わんばかりに、プロフェッショナルならではの、目から鱗なレシピがたくさん掲載されています。
これらのレシピを見ていると、今までシンプルに食べていただけのお餅の底知れぬポテンシャルが感じられそうですね。
「海老」(1,500円)をこんがりと焼いて、潰してマヨネーズと和えたアボカドをのせ、さらにちょっぴり醤油を垂らして食べてみるのも美味しいそうですね。
白ワインとペアリングしても良いかもしれません。こんな風に、「THE OMOCHI」の商品にであったことをキッカケにして、自分ならではのお餅レシピを考えるのも楽しそうですね。
これまで食べ方が限られがちなのも、現代でお餅が普及しない理由のひとつだったのではないでしょうか。アレンジレシピや、新たなペアリングのおすすめを知ることで、もっと気軽に、なおかつ愛着を持って餅を楽しむ層も増えそうですね。
ハレの日(祭り・年中行事)のみならず、ケの日(日常)にも餅の消費を促すというサステナブルな提案は、前述の目標である職人技の持続性の追求にもつながります。
「THE OMOCHI」による、老舗の餅店のフックアップやそのバックグラウンドの紹介といった、餅そのものだけでなくストーリーも含めてのプレゼンテーション。
お餅になじみの薄い海外の消費者だけでなく、お餅が近くにありながら見過ごしがちだった日本人にとっても、魅力を見つめ直すキッカケになるのではないでしょうか。