聖天と聞くと、いてもたってもいられずお参りしたくなる性分の筆者が向かったのは、江戸川区平井にある「燈明寺(とうみょうじ)」。
別名を「平井聖天」といわれており、関東三聖天のひとつとされています。
今回は、聖天のルーツや燈明寺の木鼻、そして鹿鳴館で使われていたといわれる歴史あるシャンデリアなどをご紹介していきます。
聖天とは?実は、ヒンドゥー教がルーツ
みなさん、聖天(しょうてん)とは、一体なにかご存じでしょうか?
聖天とは歓喜天・象鼻天ともいわれ、簡単に説明すると、ふっくらとしたお腹のヒンドゥー教の象神「ガネーシャ」がルーツです。
ガネーシャは、インドやネパールなどのお土産屋さんへ行くと、シールやブロマイドなどのグッズがたくさん並んでいるのを見た人もいるのではないでしょうか。
「現世利益」の神といわれ、障害を取り除いて成功に導く、商売繁盛、芸術の神であり、病苦を取り除く…と、語り継がれるご利益はパワフルでオールマイティです。
それは日本の聖天しかり。密教を修めた、ある宗教学者にいわせると「聖天様を厚く信仰すると、そのご利益ははかりしれない」とか。
そんな聖天は神様のうちで最も神通力が強いといわれ、秘仏として祀られています。
関東三聖天のひとつ、燈明寺(平井聖天)
聖天を祀る燈明寺は、「妻沼聖天」や「浅草待乳山聖天」とならぶ関東三聖天のひとつ。
JR「平井駅」から徒歩約3分ほど歩くと、住宅街のなかに佇んでいます。
古くから「墨東の名刹」といわれ、江戸時代は将軍が鷹狩りの際に聖天をお参りし、御膳所(昼食を召し上がるお休み処)として使われていたんだとか。こんなエピソードからも、将軍家とのつながりの深さがうかがわれますね。
聖天を祀るお堂は、参道から石段を登った小さな丘にあります。
聖獣あらわる?不思議な木鼻
個人的に社寺を訪れたときの楽しみのひとつが「木鼻(きばな)」の意匠です。
木鼻とはお堂の入り口の柱から突き出た左右の部分のこと。昔は木の先端である「木端(きばな)」といい、それが「木鼻」という漢字になったのだとか。
象神がルーツの聖天を祀っていることから、この木鼻は象と思いがちですが、実はバク。
バクは「鉄を食べる霊獣」といわれ、お寺の魔除けとして用いられてきました。鉄は武器の原料となるので、武器のいらない平和な世を願って…ということでしょうか。
ちなみに徳川家ゆかりの日光東照宮にもバクの彫刻がたくさん配されています。
徳川家が鷹狩の際、このお寺を御膳所として使ってきた歴史を思えば、木鼻のバクには将軍家ゆかりの意匠であるような気もしますね。
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