神奈川県の南西部、静岡県との県境に位置する湯河原は、古くから文豪に愛された歴史のある温泉街です。箱根や熱海よりも温泉街としては小規模であり、そのため観光地にありがちな騒々しさがなく奥座敷的な雰囲気が漂うのが魅力。
電車で東京駅から約1時間半、横浜からなら約1時間で行くことができるアクセスのよさも嬉しいポイントです。今回はそんな湯河原の魅力をじっくりとご紹介しましょう。
※お出かけの際は3密に注意の上、新型コロナウィルスの国内情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
東日本の温泉文化のルーツはここにあり
そんな湯河原、実は東日本で一番古い温泉といわれていることをご存じでしょうか?開湯はいまから1300年も昔にさかのぼり、万葉集にも詠みあげられた古湯です。
温泉街は駅から3kmほど離れたところにあり、千歳川に沿って四季折々の自然を背景に旅館が軒を連ねるレトロな風景が広がります。いかにも温泉情緒を誘うこの光景を眺めていると、夏目漱石や國木田独歩など文豪たちがこの地を気に入ったのもよくわかります。
個人的には湯河原の温泉というと熱湯というイメージを持っていますが、湯河原町のホームページによると源泉温度は60〜90度。確かに熱湯であることがわかります。
源泉はなんと109本もあり、泉質は塩化物泉や弱アルカリ性単純泉が主体。細かく主成分と副成分を表示すると5つものタイプがあげられるそう。どのタイプの湯も基本的には無色透明のくせのないさらっとした湯で、身体を温めると同時に鎮静効果が高いとして知られています。
古くから村人たちに湯治場として利用されていましたが、江戸時代には傷湯の効能を持つ湯として全国にその名を知られるようになりました。
レトロな温泉街をゆるりと散策
湯河原を代表する観光スポット「万葉公園」が温泉街の中心地となり、このエリアには歴史を感じさせる老舗旅館が並びます。
1882(明治15)年創業、瀟酒(しょうしゃ)な数寄屋造は国の有形文化財の指定も受ける「藤田屋」、島崎藤村が「夜明け前」の執筆を行ったことで知られる「伊藤屋」、2019(令和元)年に際コーポレーションによってリニューアルオープンした「富士屋旅館」など、どの宿も趣にあふれる純日本旅館。
最近はモダンな温泉宿が増えていますが、たまにはとことん和風の空間とおもてなしにこだわって過ごすのも素敵です。ゆっくりと湯河原らしい滞在を望む人は、こんな老舗旅館に泊まってみてはいかがでしょうか。
川沿いの道をさらに上っていくと、庶民的な宿が軒を連ねる一角へと変わり、路地裏には「湯元通り」と呼ばれる湯河原でもっとも古いとされる湯屋が並ぶ通りが現れます。なかにはすでに宿泊は行わず立寄り湯だけ利用可という宿もあり、レトロな雰囲気の温泉を楽しむことができます。