【お酒と文学】ジャック・ロンドンが安住の地を求めたソノマのワイン

image by:角谷剛

2020年2月に公開されたディズニー映画『野性の呼び声』(原題:The Call of the Wild)はハリソン・フォード主演ということもあって注目を集めましたが、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したタイミングとまともに重なったこともあって、興行的には50~100億円もの赤字になりました。

原作はアメリカを代表する文学者のひとり、ジャック・ロンドンの同名小説で、この『野性の呼び声』は彼のもっとも有名な代表作でもあります。

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1903年に出版されたこの冒険小説は19世紀末のカナダ・ユーコン準州やアメリカ・アラスカ州における「ゴールドラッシュ」を舞台に、カリフォルニア州で誘拐された飼い犬のバックの冒険と飼い主との交流を描いたものですが、ロンドン本人が実際にこのゴールドラッシュに加わった経験が背景になっているといわれています。

同作はまたたくまにベストセラーとなり、それまで貧しい若者だったロンドンは27歳にして一躍流行作家になりました。

その後、120年近くたった現在でも、アメリカ国中の小中学校で読まれ続けています。まさに国民的文学作品と呼んでいいでしょう。

日本でいう夏目漱石の『坊ちゃん』や『吾輩は猫である』が持つ知名度を想像してもらっても、『野性の呼び声』の位置はそれほどかけ離れてはいないと思います。

※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。

若き日々を過ごしたオークランド

ジャック・ロンドン駅 image by:角谷剛

ロンドンの人生はまさに「事実は小説より奇なり」というべき波乱万丈に満ちたものでしたが、同時にその40年の短い生涯はお酒を抜きにしては語れないものでした。

自伝的小説『John Barleycorn』のタイトルはビールやウィスキーを擬人化したものですが、そのサブタイトルにも「Alcoholic Memoirs(アルコール依存症のメモワール)」とあります。

ロンドンはサンフランシスコで生まれ、サンフランシスコ湾を挟んだ対岸にある港湾都市オークランドで少年時代の多くを過ごしました。


この地で貧しい家庭に育ったロンドンは、7~8歳の幼いころから新聞配達などの仕事をしていました。そして小学校を卒業すると、進学をせずに、缶詰工場で過酷な長時間労働を始めます。

まだローティーンの年齢だったわけですが、そのころから酒場でお酒を飲むようになりました。

それから18歳で高校に入学するまでの間、ロンドンはときには牡蠣の密猟者であり、他の密猟者のパトロールにもなり、遠洋漁船の船員でもあり、社会主義者でもあり、そして全米中をふらついた放浪者でもありました。

日本の横浜に上陸したこともありますし、アメリカ大陸の反対側にあるニューヨーク州バッファローの刑務所で労役についたこともあります。

そのような人生経験を積んだ18歳が、いまさら他の15歳の高校生たちと仲良く学校生活を送れるわけもありませんでした。

ロンドンは高校を卒業することはなく、入学試験を受けてカリフォルニア州立大学バークレー校に20歳で入学しますが、そこでもわずか1学期で中退します。

そして前述した通り、一攫千金を夢見てゴールドラッシュに加わりますが、1年後には壊血病にかかって、一文無しとなってオークランドに帰ってきます。

そんなロンドンにとって、創作は生活費を稼ぐ手段に他なりませんでした。多くの職業作家の例にもれず、数年間は売れない時期がありましたが、『野性の呼び声』の成功はロンドンのそれまでの人生を一変させたのです。

ジャック・ロンドン・スクエア入り口 image by:角谷剛

現在のオークランド港には「ジャック・ロンドン・スクエア」と呼ばれる広場があり、ロンドンの銅像と再現したキャビンが観光の目玉になっています。

周辺にあるレストランやバーは多くの地元住民と観光客でにぎわい、そうしたお店はもちろん、ホテルから鉄道の駅まで、ジャック・ロンドンの名を冠した看板で溢れています。

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