存在するものなのか、噂は本当なのか…謎に包まれているからこそ、心惹かれるのは昔からの常。
情報が簡単に手に入り、写真も手軽に見られるようになった現代だからこそ、自分の目で確かめたい絶景があります。そんな絶景に出会えたときの感動は「常にそこにあるもの」とは比べ物になりません。
今回の舞台は、秋田県と岩手県にまたがる「八幡平(はちまんたい)」。その頂上付近にある「鏡沼」の生み出す「ドラゴンアイ」は、神秘的な絶景の最たるもの。
そしてこの龍の目が開眼するかどうかは自然のみが知るという、奇跡の絶景の魅力についてご紹介していきます。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
「八幡平ドラゴンアイ」とは
この世に実在しないにも関わらず、誰もがその姿を思い浮かべることのできるドラゴン。神秘的で神々しいドラゴンの名前を持つ不思議な自然現象が、秋田県と岩手県にまたがる八幡平の頂上付近の「鏡沼」で起こります。
例年5月下旬から6月上旬という地上ではすっかり春の時期でも、標高約1,614mの八幡平頂上付近はやっと雪解けが始まったばかり。すっぽり雪の下に隠れている鏡沼へと雪解け水が流れ込みはじめ、沼の縁から中央に向かって雪が溶け始めます。
鏡沼へとどんどん流れ込む雪解け水は沼中央の雪を盛り上げ、水の中には丸い島ができ、他の部分よりも早く解けていくためドーナツ状に雪の島が残るのです。
この雪解け水の流れ込み方、雪の溶け方によって短期間だけ見られる姿がまるで龍の目のように見えることから「ドラゴンアイ」と名付けられ、奇跡の絶景として知られるようになりました。
毎年見られるわけではない
この自然現象が一般的に知られるようになったのは2017年のこと。つい最近まで、知る人ぞ知る絶景だったというわけですね。
八幡平を訪れた台湾の旅行者が写真に収め、SNSに投稿したことがきっかけで注目を集めるようになりました。いまや絶景もSNSで見つけ出す時代。ですが、訪れれば必ず見られるという風景ではありません。
毎年ドラゴンアイが見られるのは例年5月下旬から6月上旬にかけて。上手く形が整ったとしても、その期間は2週間だけととても短くなっています。
完全に自然が生み出す絶景で、どうして丸く雪解けが始まるのかも分かっていない「八幡平ドラゴンアイ」。その年に出現するかどうかもはっきりしません。
積雪量、その年の気候など長期的なものからその日の天気までが影響を及ぼします。完全な形は中央に窪みができてこそ。中央に窪みができず、丸い雪の島が徐々に小さくなっていくような開眼しない年もあります。
ドラゴンアイの形が整っていてもグレーの目に見えたり、澄んだ青色に見えたりと1日として同じ姿には出会えません。
「龍」に関する伝承も
八幡平にほど近い鹿角地域には、龍に関する伝承も残されています。鹿角市に住んでいた八郎太郎という男が沢の水を飲みすぎて龍へと姿を変えたという話や、その後、青森県にある「十和田湖」をめぐってお坊さんと戦う話。そして同じく龍に姿を変えた辰子という女性と恋に落ち、秋田県にある「田沢湖」で暮らしたという話などなど。
語り継がれる伝承から、この地は昔から龍と縁が深かったことが分かります。そこへドラゴンアイが現れるのもとても不思議ですよね。
Page: 1 2