台湾の「窓」に魅せられた女性
台湾の「鉄窓花(てっそうか)」をご存じですか。鉄窓花とは「防犯」を目的に住宅やビルの窓などに取り付けられる「鉄格子」のこと。日本では「面格子(めんごうし)」と呼ばれています。
侵入を防ぐ目的で窓に設置された鉄窓花。けれどもいかつい用途に反し、見た目はとても愛らしい。その名の通り「花」をデザインしたタイプが多く見受けられ、ほかにも幾何学模様がリズミカルに並ぶなど、台湾の風景をいっそう華やかにしているのです。まるで「防犯」というシビアさを、かわいさで緩和しているかのよう。
そんな台湾の鉄窓花に魅了されたのが、大阪にお住いの女性、tamazo(タマゾー)さん(49歳)。普段は放送局で情報入力をする仕事をし、休日に足繁く台湾へ通っています。
tamazoさんは台湾へ行っては、さまざまな街の鉄窓花を撮影。これまで最新刊『台湾鉄窓花蒐集帖』(鉄窓花書房)をはじめ計3冊の写真集を自費出版するほどの入れ込みようなのです。
台湾の家々はなぜ窓辺にチャーミングな装飾やデザインをほどこすようになったのか。鉄窓花の魅力とは。tamazoさんにお話をうかがいました。
かわいい「鉄窓花」が台湾の街並みを彩る
―tamazoさんがお撮りになられた台湾の「鉄窓花」、とてもかわいいです。これまで鉄窓花を何枚、撮影しましたか。
tamazo:約3,000枚です。
―3,000枚!そんなにも!すごいです!
tamazo:どれもオーダーメイドで、職人さんの手仕事。カタログもないそうです。
―見ていて幸せな気持ちになりますね。鉄窓花は台湾のどのエリアにあるのですか。
tamazo:東西南北、どの街にもまんべんなく存在しているようです。港町の基隆(キールン/きりゅう)にあったし、最南端の屏東(ピンドン/へいとう)にもありました。台湾全土でそうとう流行したんでしょうね。
―鉄窓花は全国的なブームだったのですね。台湾では、いつ頃から窓などに鉄窓花を設置するようになったのですか。
tamazo:「1920年代に日本から伝わった」と聞きました。なぜか富士山もあるんですよ。もしかしたら日本が統治した時代の名残りなのかもしれません。
台湾のビルや民家に心を奪われた
―tamazoさんが初めて台湾を訪れたのは、いつですか。
tamazo:2012年です。きっかけですか?正直にいって当時は台湾に強い関心があったわけではなく、たまたま台湾と日本を往復するピーチ(Peach・Aviation/関西国際空港を拠点とする日本の格安航空会社)が安かったから行ったんです。2012年のころはまだ片道5,000円台で台湾へ渡れましたから。
―行ってみて、台湾が気に入ったのですね。
tamazo:そうですね。活気がある市場で日本にない果物や野菜を見たり、もともと建物が好きだったので日本にはないかたちのビルや民家などが面白かったりして、すっかり台湾が好きになりました。
―その後、台湾へは何回、行っていらっしゃるのですか。
tamazo:17回、訪れています。
―9年で17回ですか。かなり多いですね。しかも新型コロナウイルスが流行する以前の回数ですものね。
tamazo:そう、コロナ前の2017年~2019年は自分のなかの台湾熱がどんどんあがっていた時期で、年に5回、ひと月に2回行ったこともあります。もっとも多く訪れたのは高雄(ガオシオン/たかお)ですね。5回くらい行ったかな。
―台湾では何泊されるのですか。
tamazo:一度行くと深掘りしたくなるので、できるだけ3日以上は滞在するように心がけています。けれども、どうしても行きたくなると、会社が終わった金曜日の夜に23時発の飛行機で向かう場合もありました。それで、日曜日の最終便で帰ってきて、月曜日に出社して。
―ハードスケジュールですね。そんなのお好きなら、いま、台湾へ行きたくて仕方がないのでは。
tamazo:そうなんです。最後に渡ったのが2020年の2月。それ以降も飛行機や宿泊の予約はしていたんです。ところが、コロナ禍で観光目的の入国ができない日が続いていて。2022年は行けるといいんですけれど。