レトロな「窓」がカワイイ。台湾を彩る「鉄窓花」に魅せられた女性
いまや貴重な存在。減少し続ける鉄窓花
―「鉄窓花」の魅力に気がつかれたのは、いつですか。
tamazo:初めて台湾へ行ったときから「鉄窓花いいな。かわいいな」と感じていました。日本でも面格子が好きでよく撮っていたんです。けれども、どんどん少なくなってきていて。
なので台湾で鉄窓花(日本でいう面格子)がいっぱいあるのを見て、びっくりしました。台湾では集合住宅の全面が鉄窓花で覆われているのが普通なのです。ほんと「めちゃくちゃいっぱいあるな」って思いました。
―ということは、初めて台湾へ行った日から鉄窓花の撮影を始められたのですね。
tamazo:いやあ、実は……当時はまだちゃんと撮影していなかったです。台湾のなにからなにまで、見るものすべてが新鮮でね。鉄窓花まで手が回らなかった(苦笑)。その後、鉄窓花は減っていくので、いま考えたら、もったいないですよね。もっと撮っておけばよかった。
―鉄窓花って減っているのですね。
tamazo:台湾を訪れるたびに減っていますね。建て替えが進んで、ステンレス製に取り替えられていっています。ステンレス製は量産品なので、装飾は直線的な幾何学模様になっていますし、鉄製よりも太くて繊細さが失われています。
―ステンレス製だと「鉄」窓花ではないですよね。
tamazo:ちょっと味気ないですよね。とはいえ、鉄だと錆びてくるからメンテナンスが必ず要りますし。あと、鉄だとペンキを塗らなきゃいけない。ペンキは錆び止めや、錆が目立たないようにするために塗られているんです。
けれどもやっぱり錆びの力の方が強い。ペンキが負けちゃう。錆びると色を塗りなおさないといけないのも面倒でしょうしね。ステンレス製に取り換えられてゆくのはしょうがないです。
―ペンキの色あいがいい味を出しているのに残念ですね。反対に、鉄窓花をまだ鑑賞できる場所といえば、どのあたりなのでしょうか。
tamazo:「1970年代までの建物が多く残っている地域」ですね。鉄窓花は1970年代をピークに製造が減っていっているのです。それなので、あんまり都会ではなく、とはいえ農村地帯でもない、ほどよくノスタルジックな街に残っています。
たとえば、苗栗(ミアオリー/びょうりつ)にはまだたくさんありました。苗栗は新幹線の駅はあるものの、観光地としてはそれほど知られていない街。日本にたとえると昭和50年代で時間が止まっているかのような、のんびりしたいいところなんです。苗栗、オススメです。
台湾で再評価の機運がたかまる鉄窓花
―台湾から消えつつある鉄窓花を積極的にカメラにおさめていこうと思われたきっかけはなんだったのでしょう。
tamazo:台湾が大好きな消しゴムはんこ作家のayaco(アヤコ)さんがお出しになった本『もっと!台湾のたびしおり 台湾一周まるごと遊ぶ!』(ワニブックス)の裏表紙に鉄窓花がたくさん掲載されていて、改めて「わあ、かわいい」と感激しまして。
そして極めつけは台湾で発売された写真集『台湾レトロ建築案内』(老顔屋 著/2018年にエクスナレッジより日本語版発売)。そこには鉄窓花がたくさん載っていて、あまりの愛らしさに、完全に火がついたんです。それ以来、渡台すると鉄窓花を狙い撃ちで撮るようになりました。
―近年は鉄窓花を撮るのが台湾へ渡る目的となっていたと。
tamazo:2018年以降はそれくらい意気込んでいました。有名な観光地へは行かなくなり、ローカルな市場や商店街、団地や住宅地ばかりを歩くようになりましたね。