散歩しながらタイムトリップ。魅惑の「昭和スポット」を探してみよう
発売してたちまち5刷を記録した話題の「旅の本」
いま一冊の「旅の本」が話題となっています。それが『昭和遺産へ、巡礼1703景』(303 BOOKS)。発売早々にウワサとなり、現在5刷を記録するベストセラーとなっているのです。
売れに売れている同作は、北海道から沖縄までに現存する(あるいは取材日に現存していた)「昭和生まれ」なお店や施設を網羅した記録集。
純喫茶、酒場、ドライブイン、遊園地、果ては秘宝館まで、昭和を彩った魅惑のレジャースポットを総まくりしています。
著者は大人気ブログ「昭和スポット巡り」を運営する平山雄(ひらやま・ゆう)さん(52)。
Twitterのフォロワーがなんと13万5,000人(!)を超えるインフルエンサーです。平山さんは埼玉を拠点としながら全国を旅し、貴重な昭和スポットの発掘と撮影、記録の保存に力を尽くしています。
いつなんどき消えてしまうかもしれぬ危うさをはらんだ昭和スポットの数々。「昭和遺産」をいったいどうやって発見するのか。「昭和スポット巡り」の醍醐味とは。著者の平山さんに伺いました。
「昭和スポットを記録しておかないとヤバい」と感じた
―いつもブログ「昭和スポット巡り」やTwitterを拝見し、「こんな素敵な昭和スポットが日本に残っているのか!」と驚いています。全国を旅する平山さんのご職業が謎なのですが。
平山雄(以下、平山):古道具を売っています。扱うのは時計や真空管ラジオ、照明など。いいと思ったものを競り落とし、修理をしたりキレイにしたり。売り物になる状態にしてインターネットで販売しているんです。
―なるほど。謎が解けました。もともと古いものがお好きだったのですか。
平山:そうですね。学生時代から服は古着屋で買っていましたし。専門学校生のころはヴィンテージの開襟シャツを好んで着ていましたね。
60年代の英国ファッションや70年代のパンキッシュなファッションに影響を受けていたんです。10代のころは「昭和」というより、海外の古いものが好きでした。
―10代のころは、どちらにお住まいでしたか。
平山:東京です。19歳くらいまで「国鉄アパート」と呼ばれる団地に住んでいました。親父が国鉄の職員だったので、職員寮を兼ねた団地で暮らしていたんです。場所は高田馬場と新大久保の中間あたりでした。
―「国鉄アパート」とは、いかにも「昭和」な名前ですね。建物は現存していますか。
平山:実は平成10(1998)年に取り壊され、もうないんです。
―ああ……それは残念です。
平山:国鉄アパートが壊される前に、観に行きましたよ。「昭和にできた物件を記録しておかないとヤバいな」と感じはじめたのは、いまから思えば平成10年あたりでした。
「デザインに度胆を抜かれた!」埼玉の昭和喫茶
―ご新刊『昭和遺産へ、巡礼1703景』は、昭和生まれの素晴らしいデザインが満載ですね。まさに「昭和遺産」。価値ある画像をいまの世に残しておく重要さを強く感じました。
なかでも純喫茶の外観や内装が素晴らしい。山梨県都留市にある純喫茶「旅苑(りょえん)」なんて最高です。
平山:旅苑、いいですよね。平成24(2012)年に山梨をドライブしていて、たまたま見つけた喫茶店です。これまでに入ったお店のなかでもトップクラスに驚きました。
壁や天井がクッションで覆われていて、度肝を抜かれましたね。いまでこそ旅苑は「昭和の純喫茶が好きなら、まず行っとかなきゃダメでしょ」と名の知れたお店です。
けれども、入った当時はネット上にまったく情報がありませんでした。現存している貴重な昭和遺産です。
―平山さんがブログで紹介するまで喫茶「旅苑」は地元の方以外に誰も知らなかったのでは。
平山:そうかもしれません。僕がネット上にアップしなかったら掘り起こされるまでにあと何年も時間を要したでしょうね。
平山さんは、ほかにも「パーラー サトウ」(北海道)など、たくさんのおしゃれな昭和喫茶を発見しています。