散歩しながらタイムトリップ。魅惑の「昭和スポット」を探してみよう
「気がつけば九州」昭和スポットを探して日本縦断
―平山さんは昭和スポットを求めて全国を旅していますが、移動の交通手段はなんですか。
平山:車です。自家用車で知らない街へ行って、駐車場に停めて、歩く。それが僕の基本スタイル。沖縄以外はすべて自家用車で向かいました。
たとえば北海道なんて広いから車がないとまわれないんですよ。なのでフェリー使って上陸しました。
―埼玉の家から北海道や東北、九州まで運転するって、たいへんじゃないですか。
平山:確かに埼玉から行ったり帰ったりしていると、たいへんです。なのでここ数年は出かけると半月ほど家へは戻らず、旅に集中します。
たとえば一日目は山梨へ行って、次の日は静岡。その次の日は愛知。次の日は奈良。その次に大阪へ行って兵庫行って岡山へ行って山口へ行って……って運転し続けていれば、一日の移動距離はたいしたことない。気がつけば九州にいるんですよ。
―「気がつけば九州」って!旅行キャンペーンのコピーに使えますよ。車で北へ南へと日本を縦断されているのですね。
平山:そうなんです。はじめは全国をまわろうって発想はなくって。せいぜい北は群馬。南や西は山梨や静岡くらいまででした。
けれども、だんだん「新潟へも行ってみたいな」「福島へも行ってみよう」と、関東圏を越えはじめたんです。
そうするとさらに「もうちょっと先の、たとえば宮城までも行けるんじゃないか」「宮城まで行ったのならば、いっそ青森まで目指せるよね」って、自然に広がっていって。
『昭和遺産へ、巡礼1703景』には平山さんが日本を旅して見つけた昭和スポットが多数掲載されています。
国産旧車を飛ばして昭和スポット探しの旅へ
―車は、なにに乗っているのですか。
平山:三菱のデボネアです。旧車を平成17(2005)年に購入しました。
―昭和の名セダンですね。あんながっしりした車体、いまは珍しいですよね。
平山:やっぱり昭和なデザインに惹かれました。埼玉に残っていた昭和の風情が残る家を購入したり、昭和に製造されたデボネアを買ったり。
昭和に囲まれた生活を実現できたのが平成17年だったんです。昭和スポット巡りを趣味として自覚するようになったのも、この年あたりでした。
―デボネアを購入する前は、なにか乗っておられましたか。
平山:国産の旧車を買うまではイタリアのバイクでした。50~60年代のベスパやランブレッタを6台くらい買ったかな。当時は海外のシックスティーズ、セブンティーズの文化に関心をもったんです。
―ベスパといえば、※1映画『さらば青春の光』に登場するモッズ族のようですね。
平山:そうなんです。僕、モッズ上がりなんです。現在も※2東京モッズシーンをけん引している黒田マナブさんとバンドをやっていたこともあるし、コレクターズや東京スカパラダイスオーケストラなどと同じステージに立った日もありました。
ただ、やっぱり自分は日本人だからか、次第に日本のもの、昭和のライフスタイルが肌にしっくりくると感じるようになってきて。それが平成に入って頭くらいの時期かな。
- ※1『さらば青春の光』(1979)…1960年代初期のロンドンを舞台にしたイギリス映画。スーツにミリタリーパーカーを着てベスパやランブレッタなどのスクーターに乗る「モッズ」族と黒の革ジャンを着込んだ暴走族「ロッカーズ」との対立を描く。人気お笑い芸人のコンビ名の由来でもある。
- ※2「東京モッズシーン」…1979年に公開された映画『さらば青春の光』の影響、あるいは同映画の原案となったバンドThe Whoなどイギリスのロックに影響を受け、新宿を中心に広がったムーブメント。日本初のモッズドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』(2018)が公開され話題となった。
昭和スポットの魅力は内装や外観だけじゃない
―車といえば、栃木県宇都宮市にある自動車の名前がついた昭和喫茶「カリーナ」のエピソードは、おもしろかったです。
平山:カリーナは昭和48(1973)年にできた喫茶店です。カリーナって聞くと僕らの世代は「トヨタの車かな」って思うじゃないですか。案の定、車のことでね。
食器棚に貼ってあったカリーナのエンブレムを撮らせてくださいとママさんにお願いしたら、「こんなのあったんだ」って驚かれて。
毎日お店で働いているのに、エンブレムの存在に気がつかなかったそうです。ママさんは2代目だとおっしゃっていたので、たぶん初代のオーナーがそこにくっつけたのでしょうね。
―のんびりして、いいお話です。
平山:そういう点も「昭和だな」って思いますね。単にお店が昭和生まれなだけではなく、親しみやすい雰囲気がね。