もう“爆買い”しない!?コロナ禍前と後で変わった中国人の日本旅行事情
インバウンドで盛り上がりを見せている日本ですが、昨今では円安の影響もあり、訪日外国人観光客の増加がさらに加速しているように感じます。都内や人気観光スポットを訪れると、「日本人よりも外国人のほうが多いんじゃないか?」と思わせるほど。
中でも、中国人旅行客は観光地巡りや爆買いなどで日本を賑わせていますが、メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』の著者でありITジャーナリストの牧野武文さんは、コロナ禍の前と後を比べてみると、中国人の日本旅行の仕方に変化が起きているのだとか。
中国人のリアルな声も交えて、昨今の日本旅行事情を深掘りしていきましょう。
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コロナ禍前と変わった、中国人の日本旅行事情

今回は、中国人インバウンド旅行客についてご紹介します。
コロナ禍前と後で、中国人のインバウンド旅行客が大きく変化しています。最近、ドラッグストアに行っても中国人の姿を見かけることが少なくなりました。
もちろん、個人的な体験であるため局所的な現象かもしれません。しかし、この体験を裏づけるデータも見つかりましたし、実際に街中でもそう体感しています。

数年前、コロナ禍前のドラッグストアといえば、中国人旅行客のグループが狭い通路を塞ぐようにいて、大きな声で中国語を話し、棚の商品をすべてカゴに入れていくイメージがありました。レジには長い行列ができていて、アリペイ+や銀聯カードで決済をするため時間がかかり、行列はなかなか進みません。
ある程度の量を買うのであればともかく、詰め替え用シャンプー1個だけ買うのであれば、あきらめて、多少高くてもECかコンビニなどで買っていました。それが最近は、ドラッグストアで普通に商品を買うことができます。
東京の街を歩いていても様子が変わっています。コロナ禍前は、1日外を歩けば、何組もの中国人グループに遭遇しました。大きな声で中国語を話して楽しそうに日本を楽しんでいるようです。

しかし、最近ではそういうグループに遭遇することがめっきりと減りました。一方、2人などの少人数で常識的な声量で中国語で会話をしている人には相変わらずよく遭遇します。つまり、団体旅行客が大きく減っていることがうかがわれるのです。
「中国日本旅行趨勢洞察報告2025」のデータを見てみると、驚くべきことに、94.1%が自由旅行です。団体、パック旅行は5.9%にまで減っています。
団体旅行が減るのはわかります。会社や組織で何十人もの団体で旅行をするというのは今時流行りません。現地での自由度も低く、疲れるだけで何も面白くないからです。コロナ禍で団体行動を避ける空気感も生まれ、それが定着しています。

しかし、パック旅行もここまで減っていることに驚きました。「パック旅行」とは、交通とホテルがセットになっているもので、全日自由時間というのが基本です。
ただし、購入するときに、日帰りなどのオプショナルツアーを一緒に購入することができます。私も、国内、国外の旅行の多くがパック旅行を利用しています。国内ではレンタカーがセットになっているパック、海外でもホテルと航空便がセットになったパックを利用します。
オプショナルツアーは滅多に購入せず、全日自由時間にするというのが基本です。読者の中にもそういうかたが多いのではないでしょうか。ホテルと交通がまとめて購入できるため便利ですし、バラバラに買うよりもお得だからです。

中国でここまでパック旅行が減っている理由は、自由旅行の購入の利便性が高くなってきていることと関係しています。著名なオンライン旅行社は、「携程旅行(Ctrip)」、「同程旅行」、「美団旅行」などですが、非常に便利になっています。
最も大きいのが「UGC(User Generated Contents)」の活用です。実際に観光地に行った人のレポート、ガイドが豊富にあり、旅行ガイドブックとしても成立をしているのです。旅行に行かなくても、パラパラと読んでいるだけでも楽しみが広がります。
さらに、同じ観光地を「小紅書(シャオホンシュー、RED)」などのSNSで検索をすると、リアルな情報も出てきます。

また、特に大きく変わったのが、自由旅行の買い方が便利になっていることです。ホテルを選ぶと、交通では現地からホテルまでの航空便などが自動的に絞り込まれ、簡単に買うことができます。
さらにオプショナルツアーや観光地での入場チケットなども表示され、最終的に価格が合計されますが、そこにさまざまなクーポンが適用されます。
つまり、パック旅行と変わらない価格で買えるどころか、キャンペーン時期などにはパック旅行よりも安くなります。それでオーダーメイドできるのですから、パック旅行を選ぶ理由がほぼなくなっています。
とはいえ、多くの中国人は日本語が話せません。また、英語が話せる人も限られています。それで海外に自由行動のみの旅行をするというのはかなり大胆であるように思います。

旅行商品だけでなく、日本への旅行の仕方、買い物の仕方などもコロナ禍前とは大きく変わってきています。そこで、今回は、このような傾向から、日本旅行がコロナ禍前とは大きく変わってきたことをさらに深掘りしてご紹介します。
また、SNSのハッシュタグを取り上げて、旅行の楽しみ方も大きく変わってきたこともご紹介。インバウンド関係者の方は、考え方を変える必要があります。以前と同じ手法で中国人が来てくれるはずだと思い込んでいると、空振りをすることにもなりかねません。