もう“爆買い”しない!?コロナ禍前と後で変わった中国人の日本旅行事情
“爆買い”しなくなった中国人はなにを買ってる?

インバウンド関係者の方は、このような変化により、お金の使い方がどう変化したかを把握しておく必要があります。旅行支出のコロナ禍前と後の変化は、買い物代が34.7%から26.5%まで減り、飲食がわずかに伸び、宿泊代が29.4%から34.6%と大きく伸びています。
観光庁のインバウンド消費統計を確認してみても、やはり買い物代が減少し、宿泊代が増加をし、飲食が微増をしているという傾向は同じです。もちろん、日本のホテル代が高騰しているということもあるかと思います。しかし、買い物代が減少傾向にあることは、関係者のみなさんは少し心配になるのではないでしょうか。

しかし、「インバウンド消費動向調査」(観光庁)のデータによると、それでも中国人の買い物代はまだまだ突出しています。関係者にとって、最も重要な顧客であることは間違いありません。
しかし、当然ながら、買い物の内容に変化が起きています。コロナ禍前の2019年とコロナ禍後の2023年の買い物体験を比較すると大きな変化が起きています。
2019年と2023年で比較した「中国日本旅行趨勢洞察報告2025」のデータによると、全体的に少なくなっており、特に保健品、医薬品、化粧品の減り方が大きくなっています。以前の中国人旅行客といえば、まずはドラッグストアに行くというのが定番でしたが、今は、コンビニが人気になっています。

さらに、興味深いのが、日本での買い物の単価の変化です。
買う機会は少なくなっているのにもかかわらず、単価は大幅に上昇していること。日本の物価が上がっているということもありますが、それだけでは説明のつかない上がりようです。
以前、中国人の日本での買い物は、お土産と転売でした。親戚や同僚にお土産を買うために、ドラッグストアの商品や箱入りのお菓子、文房具などがよく売れました。
また、中国で手に入れづらい人気商品を購入し、帰国してから転売をすることで利益を得ることができます。2018年ぐらいまでは、うまく転売をすると旅行代金ぐらいは稼げてしまうため、多くの人が転売をし、それが爆買いにつながっていました。
しかし、今では、中国で買えない日本の商品というのはほぼありません。ECで簡単に購入することができるためです。関税分は高くなりますが、わざわざ日本で買って持って帰ることを考えたら、中国で買った方がいいということになります。
また、旅行が一人旅、個人旅行が中心になると、お土産を大量に買う習慣もなくなります。本当に親しい数人に買うぐらいでしょうか。

お土産として人気があるのは、「NEWYORK PERFECT CHEESE」や「PRESS BUTTER SAND」などの日持ちがして、高級感のあるお菓子です。それも何箱も買うのではなく、小さな箱を買い、家族や友人たちなどの少人数で分け合って楽しみます。また、コンビニのコラボ商品なども自分のために買ったり、友人へのお土産としているようです。
いずれにしても、どこにでもあるようなおまんじゅうに地名の焼印だけをつけたような雑なお土産はもはや通用しないということです。日本でしか買えない、中国では買えない、品質が高い本物であれば、多少高くてもお金を出してくれる。そういう傾向が出てきています。

日本酒や味噌、醤油などの調味料は、中国人の中にも好きな人がたくさんいます。しかし、購入があまり進まないのは、液漏れしないパッケージでないと、航空会社から持ち込みや預入を拒否されるからです。また、中国で入国する時に検疫の対象となるものもあり、多くの人が面倒に感じるからです。
このあたりを調べて、店頭で試食をしてもらい、購入は航空機対応パッケージでという体制を用意しておくと意外に動くようになるかもしれません。
いずれにしても、購入頻度は減っているものの、購入単価は大幅上昇しているということは、これまで中国人に売れなかったものでも売れる可能性があるチャンスが巡ってきています。