もう“爆買い”しない!?コロナ禍前と後で変わった中国人の日本旅行事情
一人旅勢が増加。中国人旅行客に課されたビザ申請の壁

観光庁のデータによると、中国人インバウンド旅行客は、コロナ禍の間、ほぼゼロになっていましたが、2023年から再び増加しています。2019年は959万人が日本を訪れていたのですが、2024年は698万人と回復率は70%少しです。
しかし、今後も伸び続ける可能性は十分にあります。一つ目の要因は、日本政府が2024年の暮れにビザの緩和措置を行ったこと。2025年にはさらなる緩和措置が予定をされているため、そこからグッと増える可能性があります。
また、中国人が遠距離の海外旅行から短距離の海外旅行にシフトしていることも要因と考えられます。
「中国日本旅行趨勢洞察報告2025」の統計によると、東アジアには、香港、アモイ、マカオ、台湾などが含まれていますが、そのほかの地域は減少傾向にあります。近くて、漢字文化圏である国が人気になっています。
このような情勢を受けて、航空会社は日本路線を復活、新設を始めています。ビザのさらなる緩和が行われれば、2019年の記録を抜く可能性が出てきてもおかしくない状況です。

冒頭で、自由旅行が大幅に増えているとお話しましたが、もうひとつ驚いたのが、 家族旅行が大きく減って、一人旅が急増していることです。
大きな理由は、ビザ緩和政策でしょう。コロナ禍期間、日本政府は観光ビザの発給を停止していましたが、2022年10月に再開をしました。このとき、日本政府は中国に対して非常に賢い措置をとっています。
ビザの緩和を行うと同時に、審査を厳格化したのです。ビザには単次ビザと数次ビザがあります。単次ビザは1回使い切りで、数次ビザは有効期限内(3年または5年)であれば何度でも日本に入国ができます。
ただし、数次ビザを取得するには、過去3年以内に2回、単次ビザを使って日本に入国した実績が必要になります。この数次ビザの滞在可能日数を30日(有効期限3年)または90日(有効期限5年)に延長をし、さらに今年2025年には10年有効の数次ビザを発給する予定です。
その一方で、単次ビザの審査は厳格化しました。そのため、申請をしても拒否されることが増えています。書類の不備はもちろん、書類がそろっていても、不審な点がある場合は拒絶をします。

つまり、日本政府の考え方は、何度も日本に来ていて問題を起こしていない人には長期滞在できるように数次ビザを緩和して来やすくする一方で、初めて単次ビザを申請する人の審査は厳格に行います。いうまでもなく、観光以外の目的を持って観光ビザで入国しようとする人を排除するためです。
このため、通常、ビザの申請は5日から10日で可否が判明をしますが、多くの旅行社が日本の観光ビザを申請する場合は、遅くとも出発の1カ月前に申請するようにアドバイスしています。それだけ拒絶されることが増えているということです。
18歳以下の子どもや配偶者は、申請者と一緒に共同申請をすることができ、申請者の資格が審査の対象となりますが、子どもや配偶者についても審査が行われるようで、拒絶される例が増えているそうです。そのため、家族でのビザが取りにくくなっています。
このような事情により、夫婦で日本旅行をする場合でも、夫も妻も別々に申請をして、それぞれがビザを取る例が増えています。この場合、夫も妻も収入条件などをクリアしなければなりません。

こういった要因から一人旅が増えていると考えられます。このほか、大学生と卒業から3年以内の人、65歳以上の高齢者には申請の簡素化が行われています。
つまり、日本政府は身分がはっきりしている人にはビザを発給し、よくわからない人には発給しないという姿勢のようです。犯罪目的の人を入国させないように、初めての人には厳しく、何度も日本に来て問題を起こしていない人は優遇するという優れた政策だと思います。
これにより、日本旅行の渡航回数も大きく変わりました。
「中国日本旅行趨勢洞察報告2025」のデータによると、2019年の段階では半数の人が初めての日本旅行でしたが、2023年には35%にまで少なくなり、20回以上という人も7.1%います。つまり、何度も訪れた日本に一人でやって来て、自分の趣味に合わせた場所をめぐり楽しむというスタイルになってきています。
つまり、多くの中国人インバウンド旅行客が、日本では一人または日本在住の友人と行動をすることが多くなり、グループ行動をする中国人が大きく減っています。これにより、街中で「中国人がものすごく多い」印象が残らないことにつながっています。