散歩しながらタイムトリップ。魅惑の「昭和スポット」を探してみよう

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2021/05/01

現存するオススメ「昭和スポット」3カ所

―では、この記事の読者が「いまから行ける」昭和スポットを3つ、教えていただけますか。

平山さんが「キングオブ昭和遺産」と呼ぶ「宝登山ロープウエイ」(埼玉)image by:平山雄

平山:関東なら、埼玉県秩父郡にある「宝登山(ほどさん)ロープウエイ」が楽しいです。関東で最古全国で2番目に古いロープウエイです。昭和35(1960)年くらいに建てられた駅舎が、そのまま残ってます。

―優美な形状ですね。平山さんがこの本で「キングオブ昭和遺産」と呼んだのがよくわかります。では、続いては。

室蘭街道で異彩を放つ「かに太郎」(北海道)image by:平山雄

平山:北海道白老郡にある、カニ料理の「かに太郎」です。北海道に住む友人に教えてもらいました。王冠のような十角屋根が特徴で、まず外観が楽しい。

内装も360度が小上がり(こあがり)になっていて面白い。そしてなにより味がいいんです。「かにめし」、うまかったですよ。体感して面白いし、食べておいしいお店です。

―完全にオーダーメイドな建物ですよね。「かに太郎」をはじめ平山さんが紹介する昭和スポットは、予算のかかけかたのすごさと、デザイナーの本気を感じるんです。

瓦ぶきなのに洋風建築の「珈琲 ロスカ」(三重)image by:平山雄

平山:デザイナーの本気といえば、昭和38(1963)年に開業した三重県鈴鹿市の「珈琲 ロスカ」はデザインがよかったですね。横から見れば和風建築前から見ると洋風建築。一種の※3看板建築ですね。まず外観が楽しめます。

店内へ入ると、天上が吹き抜けになっており、2階からバーッと光が降り注ぐ。採光窓が天井についているんです。シャンデリアもゴージャスで素晴らしいです。

  • ※3木造の日本家屋を洋風に改築した建物。
三角柱を切って貼りこんだ意匠に驚かされる。「珈琲 ロスカ」(三重)image by:平山雄

―「昭和スポット」「昭和遺産」と呼ぶからには、昭和の建物であるのが前提だと思うのですが、それは調べるのですか。


平山:もちろん、昭和生まれか平成生まれかは確認します。けれども「これは昭和スポットだな」と直感してハズれた経験は、ほとんどないですね。迷うのはギリ平成に入った時期のものくらい。

不思議なもので、昭和のデザインは平成とは、確実にどこか違うんですよ。味わいが違うというか。

「昭和のデザインには独特な味がある。平成とはどこか違うんです」image by:平山雄

旅の基本は「行き当たりばったり」

―旅の下調べはどれくらいするのですか。

平山ほとんどしないです。気まぐれでドライブしてるだけ。

―ええ!それはすごい。

平山:近ごろはSNSで自然と情報が入ってくる場合もありますが、基本は“行き当たりばったり”です。

ざっくり「この街へ行こう」と決めて、辿り着いたらコインパーキングに車を停め、そこからひたすら歩きます。カーナビがありますから宿泊場所はなんとかなりますしね。

―風来坊だったのですね。そんな当てずっぽうで、どうやって昭和スポットを見つけるのですか。

平山ローラー作戦です。歓楽街を見つけたら車を停め、なるべく街の全部の道を歩くようにするんです。大きなS字を描きながら。

地方の歓楽街はそんなに広くないので、半日も歩けば充分。「この街は制覇したな」と納得したら車に乗って、また次の街を目指します

―街から街へ、まるで昭和の日活映画に出てくる渡り鳥みたいですね。

image by:平山雄

平山さんは昭和スポットや昭和なインテリアを求め、街から街へと渡り歩きます。

image by:平山雄
image by:平山雄

昭和スポットは懐かしさを「だーん!」と体感できる

―最後に、平山さんが思う「昭和スポット巡り」の楽しさは、どこにあるのでしょう。

平山懐かしさを“体感”する、それが楽しさ、それがすべてです。実際にその場所を訪れる行為が僕にとってはすごく大事。だーん!と全身で昭和スポットの空気を感じ取りたい。

詳しく調べたり深く知っていったりする学習も楽しみの一つだと思うんです。けれども、それはあくまで現地を実際に訪れてこそ。

昭和スポットがどこあるか、どういうものかって知識だけならば、僕にはあまり意味がない。理屈ではなく「だーん!」とくる瞬間を体感するために全国をまわっているんです。

―僕も昭和スポットのありかを知るだけではなく、実際に訪れたり見つけたりして、懐かしさを身体で受け止めたいです。ありがとうございました。

ちなみにこのインタビューは、東京・池袋の昭和スポット「珈琲専門館 伯爵」にて行われました。image by:吉村智樹

全国津々浦々に、いまなお息づく昭和スポット。行動の規制を余儀なくされる昨今、まずはお近くをひとり散歩し、あなたの街の「昭和遺産」を見つけてみてはいかがでしょう。

喫茶「カリーナ」のママのように「こんなのあったんだ」と新たな発見があるかも。3つの元号を生き抜いた、たくましくも愛らしい昭和スポット。体感することで、いつも暮らしてる街がますます好きになるかもしれませんよ。

  • 平山 雄(ひらやま・ゆう)
  • 昭和43(1968)年生まれ、埼玉県在住。平成24(2012)年からブログ「昭和スポット巡り」でジャンルを問わず昭和を体感できるスポットをリポートしている。訪ねたスポット数は1700カ所以上。住まいも古い一軒家を買い取り、完全に昭和の家庭を再現して暮らしている。「できることなら昭和時代へ戻りたいのですが、戻ることはできないので、昭和の服に身を包み、国産旧車に乗り、和製ポップスでも聴きながら昭和の面影が残る場所を巡ります」
  • blog:昭和スポット巡り
  • Twitter:@showaspotmegri
  • Instagram:showaspotmegri

昭和遺産へ、巡礼1703景

(C)『昭和遺産へ、巡礼1703景』(303 BOOKS)

これまでに訪ねた昭和遺産の数は1703カ所。そのなかから厳選し、幅広いジャンル から108景を写真と文章で紹介しています。懐かしさが新しい、いま行ける「昭和遺産」も数多く掲載! 巻末に全国昭和遺産巡礼「1703スポット」全リスト付き。

  • 『昭和遺産へ、巡礼1703景』
  • 1,650円(税込)
  • 詳細ページ
  • 著 平山雄/企画・プロデュース・編集 石黒謙吾/303 BOOKS
  • image by:平山雄(宝登山ロープウエイ)
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
  • ※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
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京都在住の放送作家兼フリーライター。街歩きと路上観察をライフワークとし、街で撮ったヘンな看板などを集めた関西版VOW三部作(宝島社)を上梓。新刊は『恐怖電視台』(竹書房)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)。テレビは『LIFE夢のカタチ』(朝日放送)『京都浪漫』(KB京都/BS11)『おとなの秘密基地』(テレビ愛知)に参加。まぐまぐにて「まぬけもの中毒」というメールマガジンをほぼ日刊で発行している(購読無料)。

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