チュニジアの首都・チュニスにほど近い丘の上に広がる「シディ・ブ・サイド」は、ここでしか見れない絶景が広がる街です。
チュニジアンブルーと、アフリカの強い光がキラキラと反射する真っ白な壁が映える美しい街並みは、「チュニジアで一番美しい街」といわれています。
チュニジアに多い鉄鋲(モスマール)で飾られた青い扉も、ここで見るのが一番きれいに感じられるかもしれません。モスマールの模様は家によって違い、魔よけの意味もあるんです。
そんなアフリカのマグレブ(太陽が沈む地方)にある、異国情緒あふれるシディ・ブ・サイドをご紹介します。
ローマ時代を感じる「シディ・ブ・サイド」
紀元前8世紀ごろに、アフリカのマグレブと呼ばれるカルタゴに、フェニキア人が住み着いたのが、カルタゴ近郊のシディ・ブ・サイドの始まりといわれています。
地中海沿いの丘の上という特性もあり、その当時から街には灯台が設置され、各地との交易によって発展していきました。
その後、ローマ人がカルタゴに入植し、シディ・ブ・サイドにもローマの街が築かれていったのです。いまでもローマ時代のモザイクが残っていて、当時の様子をうかがい知ることができます。
11世紀にアラブ勢力がチュニジアの地に侵攻してきた際には、シディ・ブ・サイドは北東部海岸の防衛の地に適していたため、監視塔が造られ、防衛の最前線となっていったそうです。
17世紀以降は、風光明媚な同所にお金持ちのチュニジア人が魅力を感じ、彼らが贅を凝らした家を建て始めたのです。
シディ・ブ・サイドの名前の由来
そもそも、日本人がなかなか聞きなれないシディ・ブ・サイドの名前の由来についてご紹介します。
一説によると、1270年にフランス国王であるルイ9世が、十字軍を率いてチュニスに侵攻したのですが、攻撃中に没しました。
けれども、実は生きていてイスラム教に改宗し、「ブ・サイド」と名前を変え、ベルベル人の娘と結婚し、余生をこの地で暮らし、やがて「聖人(シディ)」となったというのです。
これは史実上なかなか信じ難い説ですよね。
もっとも、だからこそ「伝説」なのかもしれませんが、有力な説は1231年に没したスーフィー教の導師、聖者アブ・サイドが引退後、シディ・ブ・サイドに移り住み、没後ここで埋葬されました。
彼の別名が「ブ・サイド」であったため、そのまま彼の名前がこの土地に残ったといわれています。
異国情緒たっぷりの「青と白」の街
さて、ではなぜシディ・ブ・サイドが青と白の街になったのかですが、20世紀初頭に青と白の邸宅を建てたロドルフ・デルランジェ男爵が、今後建てる家は、青と白以外の家を建てることを禁じたからだそうです。
その後、景観保護の政令によっても、無秩序な建物の建設が禁止され、青と白に統一されることとなったらしいのですが、こういった規制はシディ・ブ・サイドが世界で初めてだそう。
青と白の街は、ギリシャのサントリーニ島「イア」などにもありますが、イアの街が南欧らしい雰囲気なのに対して、シディ・ブ・サイドはアラビアン・テイストが感じられ、複雑なニュアンスを醸し出しています。
さほど大きくない街の目抜き通りは、入り口のロータリーから丘の上まで急な坂が続く「ハビブ・タムール通り」。
案外勾配がきついので、のぼるのは少し大変ですが、次々と現れる青と白の世界に魅了されます。
後ろを振り返れば、青と白の街並を見渡すことができて、疲れが吹っ飛ぶこと間違いなしです。
両側には、大人買いしたいくらい美しい色と模様の食器や小物などを扱うお土産物屋や、カフェが並んでいて、テンションも上がってしまいます。
丘の頂上からさらに進むと、海が見えてきます。青と白だけではなく、ブーゲンビリアのピンクや木々のグリーンが南国の街に色を添えていますね。
海を見下ろせる「カフェ・シディ・シャバーン(Cafe Sidi Chabaane)」は、絶景スポットとしてもオススメ。
入り口は観光客でいっぱいなので、満席なのかしらと思うかもしれませんが、ほとんどは写真を撮るだけの人なので、ぜひ奥のカフェに入ってみてください。
アルコールメニューはありませんが、イチゴやレモンのフレッシュ・ジュースが、とっても濃厚で美味ですよ。
そして、一番のごちそうは、このカフェから見る地中海の眺め。どの席に座っても、海が望めて最高の気分です。
アフリカの印象は「砂漠」や「サファリ」という人も多いかと思います。
チュニジアはアフリカの中では小さな国ですが、ラクダの騎乗体験もできる砂漠から、ヨーロッパの息吹を感じる地中海までさまざまな景色を持っている国。
そのなかでも「一番美しい街」であるシディ・ブ・サイドを訪れる機会があれば、ぜひ一日のんびりと過ごしてほしいです。
- image by:Anibal Trejo/Shutterstock.com
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
- ※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。