相手の趣旨を出来るだけ理解し、自分の意図ををより正確にに伝える「異文化コミュニーション」の手法をお伝えするメルマガ『心をつなぐ英会話メルマガ by 山久瀬洋二』の山久瀬洋二です。
今回は海外のメディアで報じられたニュースを解説。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを筆者の私見を交えてお届けします。
本日のテーマは、「時代遅れになりつつある日本の雇用の常識」です。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
あまり知られていない、日本雇用の「時代遅れ」とは?
【海外ニュース】
Fewer and fewer Japanese want to see the world. Only 24 % of them even have a passport-the lowest proportion among rich countries.(エコノミストより)
訳:世界をみたがる日本人がどんどん減少。日本人の24%しかパスポートを保有しておらず、それは富裕といわれる国の中でも最も低いレベル。
【ニュース解説】
「働き方はどうでも構いません」というスローガンをもって、世界中の人材を募集する国際企業が増えていることに我々は気付いているでしょうか。
マレーシアで仕事をしているある若者が、キャリアアップを考えているときのことです。オンラインでの人材マーケットの情報を通して新たな仕事先を見つけようとすると、「個人ではなく、会社として契約しても構いません」というオファーをもらったのだそう。
つまり、通常企業が下請け業務などを頼むときに、個人ではなく会社と会社の関係として業務を委託するように、企業の人事部が個人をリクルートする際に、その人が自分の判断で税金などを処理できる会社を作り、その会社と契約する形で採用をしても構わないという説明を受けたわけです。
面白いのは通常の人事部での人の採用に、こうした柔軟な手法が取り入れられていること。
つまり、税制は国ごとにさまざまな違いがあります。ですから世界中から優秀な人材を雇用したいと思った場合、ユニークな節税方法を思いつける場所に住んでいる人をリクルートするには、節税の方法を個人に任せた方が、合理的に人材を確保できるというわけです。
具体的にいえば、ある人の場合、法人税にさまざまな優遇措置のあるドバイに会社を作り、その会社とグローバル企業とが契約してその個人を採用します。
その場合、グローバル企業は約束した報酬をその個人が設立した法人に支払うだけで、なんら控除などの面倒な手続きをしなくてもすむわけです。
かつ、個人の側からしてみれば、個人の生活に必要な多くの部分を経費として計上することで節税ができ、お互いにウインウインな関係ができることになります。ですから、マレーシアに住む若者は、そうしたオプションもあるよというオファーに飛びついたわけです。
しかも、その会社の場合、その他にも例えば現地にオフィスがないので、自分で時間を決めてオンラインで仕事をすることもできれば、もしそれがいやであればシンガポールの支社のオフィスで通常の勤務をしても構わないという、極めて柔軟な求人条件を示していたのです。
最近、海外では人材がグローバルに環流していることから、世界中から才能を集めるためにこうした柔軟な人事政策をとろうとする企業が目立つようになってきました。
多様な言語と文化、さらには国の制度を飛び越えて、企業が自らのニーズを満たす人材であれば、どのような雇用形態でも構わないと考えはじめたのです。
こうした事例は、先端企業やベンチャー企業に多く、さらにはこれらの企業をサポートする人材エージェントにも見られます。
日本を一歩出ると、このようなダイナミックな現実を見せつけられるようになったのは、最近のことではありません。日本人もこれから自分の将来を考えるとき、この現実を体感してほしいのです。
日本で進学し、よくいわれる有名大学を出てしっかりとした企業に就職した場合と、例えばちょっと英語を頑張ってアメリカの2年生のカレッジにまず留学し、そこで得た経験をもって4年生の大学に移籍し卒業した場合、おそらく初任給だけで2倍の差がつく可能性があるのがいまの現実です。
そして企業でしばらく自分を磨いたあと、オンラインであろうと、オンサイトであろうと大学院(MBAなど)を卒業すれば、年俸で2,000万円前後の収入が可能というわけです。
誤解を避けるために、すべてがお金というわけではないということは、ここで釘をさしておきましょう。そうではなく、それだけ質があり豊かな経験ができる可能性が世界中にはあるという現実に、日本人が気付いていないのです。
さらに、明らかに海外と比較すると日本人の生活水準が落ちつつあるのも、見えていない現実でしょう。G7の一員といいながら、実態は過去に我々が思っていた中進国並みの雇用条件に日本は陥ろうとしているようです。
世界の有数な資本主義国と比べ、相対的に年収が下がり、労働の質も劣化しつつあるなかで、多くの日本の教育関係者や進路指導に携わる人々は、こうした世界の実情に目を向けようともしないことは悲しい限りといえましょう。
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