日本の外国人観光客の数は、新型コロナウイルス感染症の影響が出るまで右肩上がりでした。そのインバウンド数の増加もあり、世界トップの観光立国に追い付け追い越せという声もありましたよね。ちなみに世界トップの観光立国は、フランス、スペイン、アメリカがランキング上位に選ばれています。
しかし一方で、世界一の外国人観光客数を集める国があるのならば、世界で一番「外国人観光客の数が少ない国」もどこかにあるはずです。一体、どこにあるのでしょうか。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
観光客が世界で一番少ない「ツバル」
UNWTO(国連世界観光機関)が発表する『International Tourism Highlights』の2020年版によると、世界で最も外国人観光客が少ない国は「ツバル」です。
同国を年間で訪れた人は、なんと3,000人ほど。確かに少なく感じますよね。では、どうしてこんなに少ないのでしょうか。というよりも、そもそもツバルとはどんな国なのかをご存じですか。
ツバルといわれたらどんな場所を想像しますか?きっと多くの人が、気候変動による温暖化で海面が上昇し、水没の危機に瀕している国という印象をもつかもしれません。
現に『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)を読むと、南北560kmに点在する国土の島は、いずれも平坦なサンゴ礁で、最高地点でも数メートルほどの海抜しかないそう。
合計9つのサンゴ礁の島からなる国土の広さは全部合わせても26平方kmで、世界で4番目に小さい国とされています。26平方kmといえば、東京の板橋区よりもちょっと狭く、品川区よりもちょっと広いくらいです。
硬い石炭質の骨格をもつサンゴが長い年月をかけ、積み重なってできた島なので、土壌が農耕に向いていません。平均の年間降水量こそ多いものの川もダムもないため、雨水タンクに水をためるなどして島民は生活しています。
さらに、このところは約1万人以上いる人口のうち、半数近くが首都「フナフティ」に集中し、過剰人口のもたらす環境破壊が、海岸の浸食や床上浸水を加速させている面もあるそう。
こうやって文字で書くと、なかなか過酷そうな環境に思えます。日本からの直行便がないなどマイナスの要素も多いので、いよいよ訪れる気がなくなってしまうかもしれませんが、実際はどうなのでしょう。
訪問経験のある同業者を探して話を聞きました。すると、表面的な数字やデータだけでは見えてこない現地の人の暮らしぶりが伝わってきます。
もちろん限られた資源と国土のなかで、大なり小なりの不都合を住人は感じている様子。
しかし何世代も同じ集落に住み、共同体を維持しながら大変な愛着をもって島民が暮らしているツバルは治安も良く、訪れる価値が大きいとの話。
観光開発はされていないものの、観光客が利用できる宿泊施設や飲食店は存在し、ダイビングなどのアクティビティ、さらに離島散策や、マニアックな切手の購入などを楽しめるのだとか。
「珍しい国に行きたいという思いがある人は、真っ先にツバルを選んでみるといいですよ」と、話を聞いた同業者はいっていました。
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