奈良県には、古くから早春を告げる伝統行事があります。それが、東大寺の「お水取り」と、「若草山焼き」のふたつで、これを見ないと春がやってこないといわれるほど。
今回ご紹介する「若草山焼き」は毎年1月第4土曜日に行われ、今年は2025年1月25日(土)に開催されます。毎年恒例の伝統ある行事について、早速解説していきます。
奈良の「若草山焼き」とは?
奈良に早春を告げる、若草山焼き。その名の通り、標高342メートルの「若草山」に火をつけ燃やす伝統行事です。
山とはいうものの、山焼きに使われる部分は芝生で覆われた部分。山にある、33ヘクタールの草原に火がつけられると想像していただければ分かりやすいでしょう。
若草山焼きの起源ははっきりとしていませんが、鎌倉時代にはすでに野焼きが行われていたと記録が残されています。通常の野焼きは害虫駆除のために行われますが、若草山の山焼きは宗教的な意味合いの方が強いのだとか。
すぐ近くの「春日大社」「東大寺」「興福寺」などがこぞって鎮魂と慰霊を行い、世界平和を願うための行事となっています。
遠くからでも迫力満点の絶景!
古くから行われる伝統行事ですが、明るいうちからさまざまな催しが行われます。しかし、若草山山焼きのハイライトはなんといっても山焼きそのものでしょう。遠くからでも分かる真っ赤な炎が山を焼き広がっていく様子は圧巻の一言です。
日本でも、世界でも火を使った伝統行事は多数残されていますが、山を焼いてしまうというスケールの大きな伝統行事は若草山ならでは。大きな花火をバックに、赤く燃え上がる若草山の炎は必見です。
まずは「春日の大とんど」から
「とんど焼き」や「とんど」という行事をご存じでしょうか。地方に行くと、いまも行われているお正月明けの伝統行事ですが、都会に住んでいるとなかなか見る機会がないかもしれません。
どんど焼きとは、小正月に行われる昔ながらの伝統行事。ワラなどで櫓を組み、お正月に飾ったしめ縄や昨年のお札やお守りなどをお焚き上げする行事です。昔は地域ごとにどんど焼きが行われ、焼いた炭を七輪などに入れて餅を焼いて食べたりしていました。
若草山焼きが行われる当日には、大規模などんど焼きである「春日の大とんど」が春日大社で行われます。
炎は最大で5メートルも立ち上る大迫力で、巨大などんど焼きは必見。どんど焼きの聖なる炎はオリンピックの聖火ように採火され、若草山焼きに使われます。
山を焼く炎を近くで見ることはできませんが、とんど焼きの炎は近くで見ることができますよ。
- 春日大社
- 奈良県奈良市春日野町160
- 2025年1月25日(土)13:00~18:00ごろ
- 公式サイト
そして夕方4時45分ごろになると、大とんどから炎をいただく儀式「御神火奉戴祭」が行われます。
若草山と関わりの深い春日大社、東大寺、興福寺などの神主・僧侶の方々により厳粛な雰囲気の中で火が採取され、山伏を先頭に聖火行列が出発します。
40名ほどの行列は飛火野を出発し、若草山の麓にある野上神社を目指します。日が落ち、だんだんと暗くなる中火を灯して練り歩く聖火行列の様子はとても幻想的。神々しささえ感じる美しい光景です。
野上神社で山焼きの無事を祈る祭典や祈祷、読経が行われたあとはいよいよ点火。山焼きが始まります。火が放たれる少し前には花火も打ち上がります。
「若草山焼き」はどこで見学するのがおすすめ?
山焼きを眺められるビューポイントはいくつかあるので、事前にどこで眺めるか決めておくとよいでしょう。あらかじめどこで見るかを決めておけば、山焼きがはっきり見られなかった!ということもなくなるかもしれません。
1.平城宮跡歴史公園
少し遠くても、奈良の夜景とその後ろで燃える若草山を見たい方は「平城宮跡歴史公園」へ向かいましょう。若草山からは少し距離がありますが、スペースが広いためぎゅうぎゅう詰めにはならず快適に見学できます。
ちょうど朱雀門の後ろに奈良の市街地があり、その後ろに若草山が見えます。手間の朱雀門はライトアップされるので、和の美しさと伝統行事を同時に楽しめますよ。
- 平城宮跡歴史公園
- 奈良県奈良市二条大路南3丁目5-1
- 公式サイト
2.奈良公園「浮雲園地」
山焼きをできるだけ近くで見たい方は、奈良公園内にある「浮雲園地」での見学がおすすめ。若草山の麓の奈良公園は十分なスペースがありますが、立ち止まって見学するのは禁止です。
若草山焼き当日はかなりの混雑が予想され、交通規制が行われます。必ずマップ(PDF)を確認した上で移動するようにしましょう。
初春の訪れを感じる伝統行事。年に一回の機会ですので、ぜひ奈良ならではの風物詩を感じてみてはいかがでしょうか。
- 若草山焼き
- 近鉄奈良駅、 JR奈良駅
- 公式サイト
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