身近に使っている・食べているものが海外由来だと思っていたら、「日本生まれだった!」という話がときどきあります。
なかには日本に住んでいる私たちですら、意外と知らないことも珍しくありません。そこで今回は、外国生まれに見えるけど、実は日本発祥の意外なものを集めてみました。
日本人の移民から始まった「アロハシャツ」
日本生まれというよりも、日本人がつくった意外なアイテム「アロハシャツ」を最初は紹介します。
アロハシャツといえば、定番のハワイお土産ですよね。当然、ハワイの人たちがつくったと思いがち。しかし、諸説あるものの、このアロハシャツは、ハワイへ移住した日本人たちが考案したという説が有力みたいです。
日本人のハワイ移住が1868(明治元)年に始まると、その移住者たちは最初、サトウキビ畑の労働者として働きました。
その際の仕事着が、チェック柄の開襟の木綿長袖シャツ(パラカ)で、もともとはヨーロッパの船員が着ていた衣類みたいです。
一方で、移住者の親と一緒にハワイに渡った子どもたちには、古くなった大人の着物や浴衣の端切れを、上述の長袖シャツ(パラカ)のように仕立てて着させていました。
当然、見た目は、洋風の長袖シャツながらデザインは和柄になります。そのオリエンタルなファッションが、アロハシャツの源流になったとされています。
その後、移民たちは農業の仕事から、町中での仕事にも乗り出し始めます。
宮本長太郎さんという方がホノルルで1904(明治37)年に仕立て屋「ムサシヤ・ショーテン」を始め、日本の反物を和柄シャツに仕立て販売し始めます。
さらに、宮本長太郎さんの息子の孝一郎さんが、1935(明治10)年に「アロハシャツ」の名称で新聞広告を出しました。このアロハシャツが、現在のアロハシャツの直接的な始まりと考えられているのですね。
ちなみに、このアロハシャツの生地を製作し、ハワイまで輸出していた供給地は日本の京都や大阪がメインだったといいます。
日本人が考案し、和柄やトロピカルな柄の生地をホノルルへ送っていた供給地も日本だとすれば、日本生まれのアイテムといっても言い過ぎではないかもしれませんね。
「オセロ」はイギリス発祥と似て非なるゲーム
次は「オセロ」について。このオセロといえば、64のマス目に区分けされた緑色の盤上で、黒と白の石を使って楽しむ盤上ゲームです。
なんとなくの見た目から、さらにはその名称から、外国生まれで日本に輸入されたゲームのように感じませんか?異なる見方は存在するものの、オセロは実は日本生まれです。
全くのオリジナルというより元ネタがあって『世界大百科事典』(平凡社)には、
<イギリス生れの盤上ゲーム。〈リバーシreversi〉の名で1888年に商品化された>(『世界大百科事典』より引用)
と書かれています。
この「リバーシ」は、明治時代に輸入され「源平碁」の名前で売り出された盤上ゲームです。しかし両者は、似て非なるゲームであるとオセロの公式ホームページには書かれています。
新潟日報のWebサイトに記載された日本オセロ連盟理事の言葉によると、「白黒の石を、挟んでひっくり返す遊び方の根本は一緒ながら、現在の見た目や、遊び方のルールを制度化した盤上ゲームがオセロ」とのこと。
緑色の盤、直径約35ミリメートルの牛乳瓶のふた程度のオセロ石の大きさ、盤の中央に白黒交互に並べてスタートするなどを定め、当時会社勤めをしていた長谷川五郎さんが、1973(昭和43)年に、オセロという登録商標で販売します。
この瞬間をもってオセロがこの世に誕生したと考えられるのですね。
ただ、上述したとおり『世界大百科事典』(平凡社)には『オセロ』の解説として「イギリス生まれ」と書かれていました。異なる百科事典には、
<日本で考案された盤上ゲーム>(『ブリタニカ国際大百科事典』より引用)
と書かれているもののリバーシとオセロを同じと考えるか、異なるゲームだと考えるかで、ルーツについては見解が変わってくるようです。
英語版Wikipediaのリバーシの解説にも、
<It was invented in 1883.Othello, a variant with a fixed initial setup of the board, was patented in 1971.>(Wikipediaより引用)
とあります。
「リバーシは1883年に考案された。オセロは、その変化形で、決まった最初の始め方が盤上にある。商標登録は1971年」といった日本語訳になります。ただ、少なくとも、われわれが知るルールの下で遊ぶオセロについては、日本で確立されたのですね。
ちなみに、名称の由来は、シェイクスピアの戯曲『オセロ』から。黒人の将軍オセロと白人の妻デスデモーナの目まぐるしく移り変わる人間関係を由来にしているみたいですね。
長谷川五郎さんの父親で英文学者でもある長谷川四郎さんが、この知的でおしゃれな名前を考えたそう。この英文学者の考えた名称も外国生まれだと勘違いさせる一因かもしれませんね。