女性の自転車姿が卑猥だった?100年前までは非常識だった現代の日本の常識

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常識」って、いろいろ変わっていきますよね。いまでこそNGとされている習慣も、もしかしたらちょっと時間が立てば変わっていくかもしれません。

実際に日本ではほんの100年前には非常識だったけれど、現代では当たり前になっていることがあります。

例えば「黙読」だったり「自転車」だったり、いまでこそ普通に行われていたり使われていたりするもののなかには、少し前までダメとされていた歴史があることをご存じでしたか?

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江戸時代の「黙読」は奇抜な行為?

寺子屋の筆子と女性教師。image by:Issunshi Hanasato, Public domain, via Wikimedia Commons

皆さんは本を読むとき、どのように読みますか?学校の授業や子どもへの読み聞かせを除けば、「黙読」が一般的だと思います。

しかし、明治時代の途中まで、読書といえば「音読」が基本で、黙読の習慣が始まっても、静かに読む姿が奇抜に見えた時代が長く続いたのだとか。

もともと、日本の商業出版は江戸時代にスタートしました。とはいえ、全員が文字を読めるわけではありません。

同時代の他の地域と比較して、江戸時代の日本人たちは、識字率が高かったともいわれていますが、男子の40~50%、女子の15%くらいだったとの試算もあります。

本自体も、まだまだ貴重です。家族やグループの中で文字を読める人が音読し、その内容をシェアするというスタイルが一般的だったそうです。要するに音読が読書の中心だったのですね。

福沢諭吉・小幡篤次郎共著『学問のすゝめ』(初版1872年)image by:Fukuzawa Yukichi / Obata Tokujiro, Public domain, via Wikimedia Commons

しかし、明治時代に入ると、出版物の流通が進化します。発行部数の増加を狙って、簡単な文章を意識した、全員が読める(句読点を導入したり言文を一致させたりした)新聞や雑誌も次々と登場。


学校教育も普及します。明治時代の初期は低迷していたものの、明治の半ばごろから日清・日露戦争ごろまでに、識字人口の層も厚くなっていきました。

加えて、各地に誕生した公共図書館も読書スタイルに影響を与えました。明治の10年代から30年代に東京周辺で、30年代の後半からは地方図書館が次々と誕生し、それらの館は全て、図書館規則として音読禁止条項を設けました。

京都電気鉄道の1911(明治44)年製電車。image by:Wikipedia/public domain

もちろん、声を出さずに本を読む図書館利用者の姿はそのころまだ、珍奇に見えたそうです。

<静としてさながら人なき境の如し>(『女学雑誌』の清水豊子の記述より引用)

それだけ、多くの人が音読になじんでいた証拠ともいえるはず。

しかし、大正時代になると、電車の中で音読する人を不快に感じる人も見られ始め、そうした移行期を経て、読書=黙読という現代の姿が定着していったのですね。

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