日常的に銭湯に入る文化は、今でこそ多く見られなくなりました。ママチャリで日本征服(日本一周)を目論む大魔王ポルポルが訪れたのは、沖縄県にたったひとつしかない銭湯。番頭のおばあちゃんの昔話に悪魔の心もすっかり洗い流されてしまったようで…。
ハエを連れては日本征服などできまい
沖縄には1軒しか銭湯がないのを知っているだろうか。時代とともに減りつつある銭湯、そこはかつてコミュニケーションの場であり、社会のマナーを学ぶ場所でもあった。「沖縄」を「おきな魔」に変えることに苦戦する中、我輩は1軒しかない銭湯ならたやすいであろうと、支配しに向かったのだ。
その銭湯はコザ市(現・沖縄市)にという場所にある。
ソーキそばを食べたり、港川ステイツサイドタウンのような街を見て回り、歩きっぱなしで路頭に迷っていたので我輩は汗だくだ。
本州と違って沖縄の気温は、12月でも20℃を超えることがある。我輩は今すぐにでも風呂に入りたかったのだ。
「ちっ!!大魔王といえど汗がダラダラ出て征服活動が務まらぬ。ガッハッハッハッハ!!」
真夏のような日も、雨が降り続く日も味わい、とにかく汗がダラダラ出ていた。
背中には亀の甲羅のような重たいカバンを背負っている。背中からは流れるように汗がでて、気持ち的にもジメジメしている。
「全てを洗い流すニンゲン界の風呂に入り、裸の付き合いを学ぶのだ。ガッハッハッハ!!」
我輩はコザ市の中乃湯という銭湯を目指して歩き続けていた。
「やはり・・魔族とはいえ、8日も風呂に入ってなければ、ハエと友達になってしまうな。ガッハッハッハッハ!!」
ハエと一緒に歩いている限り、日本征服などできない。魔族とはいえ、やはり清潔感が大事なのである。
コザ市に着くと大通りから少し離れた、小さな路地に入っていき、古びた建物が見えてくる。
看板に大きく「中乃湯」と威厳を放つ建物がそれだ。
市民から何十年も愛され続けている中乃湯はこの街の歴史すら語ってくれそうだ。
しかし、その中乃湯も少しずつ「魔乃湯」に変わろうとしていたのだ。
ガッハッハッハ!!日本には裸の付き合いというものがあるそうだ。魔界には、その風習がないのだから、裸の付き合いを学ぼうではないか。ガッハッハッハッハ!!
と、店の前に、ひっそりとたたずんでいると、中から銭湯を切り盛りするおばあちゃんが一人出てきた。
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