8日間風呂なし男の心も洗われた、沖縄でたったひとつの銭湯へ赴く
沖縄にたったひとつの銭湯の独自スタイル
おばあちゃんは我輩を見ると、何も言わずに「はい。一人390円ね」と平常運転で我輩に言った。
「え・・は、はい・・」
あまりの平常運転に少し動揺をしてしまったが、我輩はすんなりお金を払った。
そして、おばあちゃんは我輩のことを旅人と悟ったようだ。
「あんた、何処から来たね?」
「え・・大阪出発ですけど・・」
我輩の方が少し動揺したが、おばあちゃんは寂しそうに話しだした。
「沖縄の銭湯はね、ここ1つだけだから。ゆっくり入りな」
我輩に優しく語るのだ。
沖縄の銭湯は、ピーク時には300件ほどあったそうだが、重油の高騰により次第に数が少なくなったそうだ。そして、現在は中乃湯のみの1軒まで激減するという事態である。
「昔は、地域中から集まってきたんだけど、若い人が来るのは珍しいからね」
我輩は「魔乃湯」に変えることが恥ずかしくなった。日本中を旅してきたが、やはり、銭湯自体が少なくなっているのは肌で感じるのだ。
温泉複合施設のような建物は、入場料が高く旅人には痛手の出費となる。
「温泉行くなら一食分食べれるよな」
となるのだ。そのため中乃湯のような気軽に入れる銭湯をよく探すのだ。
しかし、おばあちゃんの悲しい話に、我輩は
「な・・なるほど、そうであったのか」
というしかなかった。
そして、「そのメイクは落として入ってね」と、おばあちゃんは一言付け加えて戻っていった。
銭湯の中に入ると、沖縄独自のスタイルが広がっていた。
施設はコンクリート造りで壁一面は真っ白。天井が高く作られていて、湿気でジメジメすることはない。
一般的な銭湯と違うのは脱衣所と洗い場の仕切りがないということだ。
これは沖縄独自のスタイルで、今までになく珍しく感じた。そのまま服を脱ぎ、ロッカーに入れて浴槽に入れるようになっている。
「ガッハッハッハ!!なんとシンプルな風呂なのだ。素晴らしいぞ。沖縄独自のスタイルが守られている。裸の付き合いが学べながら、ロッカーの服が盗られないか見守れるシステムだな。ガッハッハッハッハ!!」
大魔王は沖縄独自のスタイルをすごく気に入り感心した。
この銭湯の特徴は、真ん中に小さな円形の浴槽が一つだけ置いてあるだけ。沖縄ではこれを「池」と言うそうだ。
薄い緑色のお湯があふれているが、これは温泉。
全てが珍しく、さっそく我輩はニンゲン界の極楽を味わうため浴槽に入った。
「ガッハッハッハッハ!!8日ぶりの風呂は実に気持ちがイイのだ。今日は支配など忘れてしまおう」
早くも仕事を放棄した。歴史と共に昔ながらの銭湯が消えていくのは悲しい、これは守られねばならぬ。沖縄は中乃湯の1軒だけであるが、これもおばあちゃんの人情と地域から守られているからこそ成り立っているのでだろう。
我輩は大事なことを学んだ。その風呂の成分を明日からの支配活動のために吸収しながら大魔王は、のぼせる前に風呂から上がった。
「ガッハッハッハ!!これで、ハエともおさらばであるな」
同時に「中乃湯」を「魔乃湯」に変えるのは諦めた。
恥ずかしい気持ちと、銭湯に入り、すっかり心を洗い流してしまいそうな魔力が中乃湯にはあったからだ。
「ガッハッハッハ!!ニンゲン界の風呂は素晴らしいかった。機会があれば、また立ち寄ろうではないか」
極楽を味わった存分に味わった大魔王は、沖縄県の名護市の方を征服するために再び歩き続けた。
中乃湯
住所:沖縄県沖縄市安慶田1丁目5−2 中乃湯
定休日:木曜・日曜
営業時間:15:00〜21:30
料金:大人(12歳以上)390円
- image by:大魔王ポルポル
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