大ナマズを抑える要石ってなに?地震にまつわる伝説が残る「香取神宮」と「鹿島神宮」

image by:photoAC

大地震は地中に住む大ナマズが引き起こす、という伝承を耳にしたことはありませんか?歴史に残っているだけでも多くの地震被害を受けてきた日本には、地震が起こらないように、被害が抑えられるようにと願いを込めて祀られた場所がいくつも存在します。

そのなかでも有名なのが茨城県鹿島市に鎮座する「鹿島神宮」と、千葉県香取神宮に鎮座する「香取神宮」です。今回は不思議な要石を持つ二社の神宮の伝説と見どころをご紹介します!

不思議な「要石」と大ナマズの関係は?

image by:Shutterstock.com

海、山に囲まれる日本。豊かな自然に囲まれる日本ですが、自然によってもたらされる数多の災害を乗り越えてきた歴史を持ちます。大地が揺れる大地震もそのひとつ。避けがたい地震の被害を少しでも抑えるためには、神頼みが有効だと信じられてきました。

江戸時代の人々は、巨大な地震は地中に住む大ナマズが暴れることによって引き起こされると信じていたのだそう。地震が起こるメカニズムは現代でこそ解明されていますが、当時は何か人外のものの力によって引き起こされていると考えられていたのですね。

この大ナマズが暴れないよう押さえつけ、大地震が起こらないようにと願いが込められたのが「要石(かなめいし)」です。

image by:photoAC

要石とは、鹿島神宮と香取神宮の境内にある霊石のこと。大部分が地中に埋まっており、その全貌がどのくらいの大きさなのかは、はっきりと分かっていません。

地上から見られる部分は7cmほどの高さの丸い石。ここが石のてっぺんで、この下には大ナマズを押さえつけるほど大きな岩が埋まっていると伝えられています。

この要石は大ナマズの頭と尻尾を押さえつけているとされ、そのおかげで大ナマズは暴れられないのだとか。

江戸時代の後期、安政の大地震が起こったあとには地震を起こす大ナマズを懲らしめる、鹿島神宮の神様の絵が大流行したことが伝えられています。


この「鯰絵(なまずえ)」は江戸を中心に発行され、その種類なんと250!江戸時代の人々がどれほど地震を恐れ、鹿島神宮や香取神宮にすがっていたのかが分かりますね。

要石はどのくらいの大きさ?掘り起こそうとした人も…

image by:photoAC

地中深くまで沈み、大ナマズを押さえつけている要石。こういわれると、実際のところどのくらいの大きさなのか気になりませんか?

実は、過去に鹿島神宮の要石を掘り起こそうとした人物がいます。それが水戸藩主、徳川光圀です。水戸藩の二代目藩主であった徳川光圀は、7日間かけて要石を掘り起こそうとしたのだとか。しかし掘っても掘っても先が見えないばかりか、翌朝になると要石はまた地中に埋まっていた、との記述が残されています。

この不思議な逸話が本当なのか、誇張されたものなのかは不明ですが、要石の本当の大きさは現代においても謎のまま。きっとこの先もこの謎が解明されることはないでしょう。それでも昔からの伝承を信じたくなる不思議な石です。

茨城県にある「鹿島神宮」へ出発!

image by:beibaoke/Shutterstock.com

二社の要石がどのようなものなのかは分かりましたね。では実際に見に出かけてみましょう。

まずは、茨城県に鎮座する鹿島神宮をご紹介します。広さが東京ドーム15個分に匹敵する鹿島神宮の奥宮の、さらに奥にあるのが要石です。

要石に向かう参拝道には本殿や拝殿以外にも多くの見どころがあるので見逃さないようにしましょう。

御祭神はタケミカヅチノミコト

image by:Shutterstock.com

立派な本殿にお祀りされているのはタケミカヅチノミコト(武甕槌大神)という神様です。

別名、鹿島神とも呼ばれるタケミカヅチノミコトは、武の神様として知られており、相撲の始祖であるとも伝えられています。力強いタケミカヅチノミコトが大ナマズを押さえ込む姿が、江戸時代に流行した鯰絵に多く描かれました。

タケミカヅチノミコトが御祭神である鹿島神宮は、勝利祈願必勝祈願のご利益があるとされています。日本三軍神の一柱にも数えられる神様にお願いすれば、どんな勝負事でも勝利を収められそうですよね。

要石の前には石碑も

image by:Shutterstock.com

本殿、拝殿を抜け奥参道を通り奥宮へ参拝し、さらにその先へ足を進めると現れるのが要石です。要石の前にはタケミカヅチノミコトが大ナマズの頭を抑え込む一場面を切り取った石碑が置かれています。雄々しく勇敢なタケミカヅチノミコトの姿は必見ですよ。

image by:photoAC

石碑の奥にある要石は想像する以上に小さな丸い石です。地上から見えるのは石の表面だけで、どのくらいの大きさかは予想できません。

地中深くに埋まっていることから、鹿島神宮の要石は凹香取神宮の要石は凸とされています。

二社の要石は地中で繋がっているという逸話が残されており、こちらの要石は大ナマズの頭側なんだとか。対をなす2つの要石、続いて香取神宮の要石を見に出かけてみましょう。


千葉県「香取神宮」の要石は?

image by:Shutterstock.com

千葉県香取市にご鎮座する香取神宮。全国に約400社もある香取神社の総本社として知られる香取神宮の、境内西側にあるのが要石です。鹿島神宮の要石より地上に突き出す形が、凸の要石と呼ばれる所以です。

香取神宮にお祀りされているのはフツヌシノカミ(経津主神)。タケミカヅチノミコトとともに、神話「出雲の国譲り」に登場する神様です。

香取神宮の要石はフツヌシノカミが、鹿島神宮の要石はタケミカヅチノミコトが地中深くに埋めたとされています。香取神宮は大ナマズの尻尾を抑えているのだとか。茨城から千葉までを巨躯を持つ大ナマズというわけですね。

力強いご利益にあやかろう

image by:Shutterstock.com

そろって神話に登場し、日本国をおさめたフツヌシノカミとタケミカヅチノミコトは同じく日本三大軍神と呼ばれています。ちなみに、日本三大軍神のもう一柱は長野県にある「諏訪大社」にお祀りされているタケミナカタ(建御名方神)です。

タケミナカタノミコトはタケミカヅチノミコトに勝負を挑み破れていますが、圧倒的な強さであったタケミカヅチノミコトに向かって行く勇気や心の強さが崇拝されている理由なんだとか。大ナマズを押さえ込む要石こそ持たないものの、長野県から地震で被害が出ないよう見守ってくださっている気がしますね。

フツヌシノカミのご利益には、武芸上達、スポーツ上達、厄除け、地震除けなどさまざま。香取神宮に参拝し芸事の上達を祈願し、鹿島神宮に参拝し必勝祈願を行えば鬼に金棒です。

今回は日本神話に深く関わりのある2つの神宮をご紹介しました。延々と語り継がれてきた神話が現代と繋がる不思議な体験ができる「鹿島神宮」と「香取神宮」。地震避けはもちろん、必勝祈願にふたつの神宮へ参拝にでかけてみてはいかがでしょうか。

  • 鹿島神宮
  • 茨城県鹿嶋市宮中 2306-1
  • 0299-82-1209
  • 鹿島神宮駅
  • ホームページ
  • image by:photoAC
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
いま読まれてます
TRiP EDiTOR編集部 :TRiP EDiTORは、「旅と人生をもっと楽しく編集できる」をコンセプトに、旅のプロが語りつくす新しい旅行メディアです。