熊本県南部、日本三代急流である球磨川のほとりに宿が軒を連ねる「人吉温泉」は、古く室町・戦国時代にさかのぼる歴史ある温泉地です。
3年前の豪雨で甚大な被害を受けたことは記憶に新しく、このエリアでは未だ道路や鉄道の復旧作業が続きますが、温泉地としてはすでに訪れる観光客の姿に賑わいを取り戻し、順調に復興の道を歩む様子が明るいニュースとして伝わってきていますね。
今回はくまモンが復興音頭の旗振りを務める、”人吉温泉の今“を伝えたいと思います。
“美人の湯”として名高い「人吉温泉」
九州の数多ある名湯の中でも、“美人の湯”として名高い「人吉温泉」。根強い人気の理由は、やはりその温泉の質にあります。
源泉は弱アルカリ性の炭酸水素塩泉・塩化物泉で、がつん系ではなく、じんわりと浸かれば浸かるほど温泉のありがたみが染み込んでくるタイプの湯。
浸かったときの肌をやさしく包むヌルヌル感が素晴らしく、湯上がりのしっとり感もまた格別で、化粧水やボディローションをつけずとも肌が整います。
現在、源泉は50あり、宿や公共温泉によっての微妙な違いを楽しむことができるのもうれしく、入れば入るほど“美人の湯”を実感するので、連泊して“美人”を追求したくなるかも。
「人吉旅館」は、昭和9年創業の風情ある日本旅館
この泉質の素晴らしさと並び人吉温泉を魅力的にみせているのが、歴史の古い温泉場であること。
川沿いに創業100年を超える老舗旅館が並ぶ様子は温泉風情にあふれ、ところどころに古い城下町の名残が残る町並みもまた旅気分を盛り上げます。
私が宿泊した「人吉旅館」は、国登録有形文化財に登録された昔ながらの老舗旅館。先の豪雨では1階の天井まで浸水するという大被害に見舞われましたが、現在はすべての復元工事も終え全面復旧営業しています。
創業時(昭和9年)の姿をそのままとどめた近代和風建築は実にノスタルジックな雰囲気にあふれ、どこを切り取ってもフォトジェニック。
中庭に面したレトロなガラス窓に緑が映る廊下や、ステンドグラスの装飾など、館内を眺めて歩くのも楽しく、建築やインテリア好きな人にはたまらない旅館でもあります。
ノスタルジックな館内を進み、いざ大浴場へ
浴衣姿で館内を散策するだけで至極の温泉旅気分。浴場へ向かうところから温泉情緒が高まります。
男女ともに内湯(時間帯によって入れ替え制)と露天が1つずつ。そのほかに空いていればいつでも利用可能な小ぶりの家族風呂が2つ。
内湯は24時間いつでも入れるのがうれしく、特に深さ80cmもあるめずらしい深湯の内湯が気に入りました。
ちなみに、「人吉旅館」の湯はうっすらと茶色いにごり湯で、ときどき茶色い湯の華が浮かぶもの。
ph値は8.1とさほどアルカリ度数が高くない割に、驚くほど湯のヌメヌメ感がまろやかなのは湯に含まれるメタけい酸とメタほう酸の量が多いからでしょう。
浴槽の中にベンチがあり、ゆったりと足を伸ばして腰掛けながらの湯浴みが最高に居心地いいのです。あまりにも内湯の居心地がいいので、温泉に入るほかは正直もう何もしなくて大満足というのが感想。
部屋の目の前に球磨川の景色が広がる絶妙さもあり、ロケーションも抜群です。完璧なお籠り滞在に徹したい気持ちでしたが、せっかく人吉まで来たので少し観光もしてみました。
- 人吉旅館
- 熊本県人吉市上青井町160
- 0966-22-3141
- 人吉駅 ※現在は運休中のため八代駅が最寄り
- 公式ホームページ