オランダのガイドブックで必ず紹介されている観光スポットのひとつ「アムステルダム国立美術館」。「Rijks museum(ライクスミュージアム)」ともよばれ、オランダを代表する美術館です。
SNSやCMでよくパロディネタとして扱われる名画「牛乳を注ぐ女」を所蔵する美術館としても知られています。
17世紀ごろ、オランダ芸術史黄金期と呼ばれる中世の作品を中心に、ヨーロッパやアジアの美術作品も数多くそろう美術館。本やテレビで見た!という有名アートもたくさん。ですが収蔵作品8,000点という大きな美術館のため、どこで何を見たらいいのやら…と戸惑うことも。
そこで「ぜひ見ておきたいとっておきの作品」と「おすすめ攻略法」をご紹介します。オランダでアートに浸る旅、ぜひお楽しみください!
アムステルダム国立美術館とは?
「アムステルダム国立美術館」は、1885年に現在の場所にオープンしました。しかし歴史はさらに古く、1800年にデン・ハーグ市にある現在王室一家が住んでいるハウステンボス宮殿に作られた美術館が発端。
その後1808年に当時オランダの実権を握っていた、かの有名なナポレオンによってアムステルダムに移転しました。
近年では2004年から改修工事が行われていましたが、敷地内を通る自転車道をどうするかという点で住民と揉め、なんと10年近く休館していたなんていうエピソードも。
2013年のリニューアルオープン後は世界中から観光客や美術ファンが集まり、2023年には年間270万人以上もの人々が訪れました。
そして日本人にも人気のある、フェルメール作品「牛乳を注ぐ女」が展示されているのが、この美術館なんです!
絶対に見ておきたいおすすめ7作品!
さっそく、ここに来たら必見!の代表的な作品を7つご紹介しましょう。
1.牛乳を注ぐ女
言わずと知れたフェルメール作品の傑作。日本人にとっては作品自体はもちろん、さまざまなパロディなどにも使われ有名ですね。日本でも2018年に上野の森美術館で展示され、話題となりました。ここでは間近でゆっくりと観賞することができます。
特に見てほしいのが「場の空気感」。フェルメールはこういった「日常のワンシーン」を鋭く切り取った作品を多く残しています。
この絵は「女中さんが残り物の硬くなったパンに牛乳を浸してパンプディングを作っているところ」という、なんてことないシーンなのですが、どことなく凛とした空気感が漂います。
「きっと食べ物を粗末にしないきちんとした女中さんだったんだろうな」とか、「食後のデザートに出すのか、それとも自分たちのおやつにするのかな」とか、どんどん想像が膨らみます。
それを支えているのが、光と影を巧みに使い分けた陰影と、陶器や布地など質感の表現。見る人がまるでその空間に居合わせているようなリアルさを感じます。見る人の心を、当時の生活の場そのものに引き込んでくれるのが、フェルメール絵画の魅力です。
2.夜警
大きさ、有名さともに当館最大を誇るレンブラントの作品。輸送に耐えることが難しいとされ、他の美術館に貸し出されることはない、門外不出の作品です。
実際目の当たりにすると、その迫力だけでなく、装飾など緻密に描き込まれた精巧さにも驚きます。少し離れてみると、中心の二人とその後ろにいる少女にスポットライトが当たったかのような、明暗の使い分けもグッときます。
「夜警」という名で知られていますが、正式には『フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊』という作品。
しかも夜の警備に見えますが、実際には昼間の様子を描いた作品でした。塗料のニスの変色でこのような色合いに変わり、まるで夜の警備に出発するかのような作品となったそうです。時を経て、新たな魅力と名声を得たわけですね。
「夜警」は現在、調査と修復作業が行われており、ガラス越しに見学ができます。でも作業中も作品を見られるのはありがたい!しかも通常は額縁に隠されて見えない、端の部分も見ることができ、ある意味貴重な機会です。
「夜警」は縦3m80cm、横4m53cmというとても大きな作品ですが、元々はさらに大きい作品でした。しかしアムステルダム市庁舎に飾られる際に、大きすぎて入らなかったのでちょっと切ってしまったんです。
2019年から行われている今回の調査修復作業では、これらの切り取られた部分について、残されていた模写やAI技術などを使い再現されました。2021年に公開され、現在も公式サイトで全体像を比較することができます。
ちなみにこの作品、第二次世界大戦中は空襲の被害を恐れ、5年ほど美術館から疎開していました。何カ所か転々と移動しながら、最終的には額から外して巻物のように丸めた状態で、アムステルダムから180kmほど離れたオランダ南部のマーストリヒトへ。シント・ピーテルスベルグ洞窟深くに設けられた美術品倉庫に、ひっそりと隠されていました。あれだけ大きな作品を丸めて保管していたということにも驚きです!
3.威嚇する白鳥
日本ではあまり知られていませんが、オランダでは独立のシンボルとして長く親しまれてきた作品です。犬から卵と巣を守ろうとする白鳥の姿ですが、これが敵国から国を守る当時の政治指導者、ヨハン・デ・ウィットと重ねられてきました。
とても迫力のある白鳥ですが、ほぼ実物大だそうですよ。私もオランダの水路で何度か白鳥に会い、しかもひながいたので威嚇されたのですが、翼を広げて迫る様子は本当に大きくて勢いもあり、ちょっと怖かったです。