新幹線で目的地まで一気に駆け抜けるのも旅。ローカル線の窓から流れる景色をのんびり眺めるのも旅。ひとくちに「鉄道旅」といっても、その楽しみ方は十人十色です。
近年は円安や物価高で海外旅行のハードルが上がり、国内旅行への関心が高まっています。そんな中、改めて注目を集めているのが「鉄道を使った旅」という選択肢。移動そのものを楽しめる鉄道旅は、コスパとタイパを両立できる旅のスタイルとして、幅広い世代から支持を集めつつあります。
そこで今回ご紹介するのは、株式会社NEXERと鉄道情報サイト「鉄道ひろば」が共同で実施した「『鉄道×旅行』の楽しみ方」に関するアンケート調査の結果。事前調査で「鉄道に興味がある」と回答した全国の男女142名を対象に、鉄道旅の目的や楽しみ方、憧れの路線、観光列車への関心などを幅広く聞いています。
データから浮かび上がってきたのは、「移動時間こそが旅のハイライト」という、鉄道旅ならではの価値観でした。それでは早速、調査結果を詳しく見ていきましょう。
鉄道好きの8割超がすでに体験済み。「乗る」ことが旅の入り口に
まず気になるのが、鉄道に興味がある方のうち、実際に鉄道旅を経験したことがある方はどのくらいいるのかという点です。
調査の結果、「鉄道を利用した旅行をしたことがある」と回答した方は85.2%にのぼりました。一方で「ない」と回答した方は14.8%にとどまっています。
鉄道に興味がある方の8割以上がすでに鉄道旅を経験済みというこの数字、かなり高い割合ではないでしょうか。ほかの趣味であれば「興味はあるけれど、まだやったことがない」という方がもう少し多くなりそうなものですが、鉄道の場合は「興味を持ったら、まず乗ってみる」というアクションに直結しやすいのかもしれません。
日常の通勤や通学で鉄道に触れる機会が多い日本ならではの土壌も影響しているでしょう。普段乗っている電車の延長線上に「旅」がある。その距離感の近さが、鉄道旅の裾野を広げている要因のひとつといえそうです。
鉄道旅の目的は「移動の楽しさ」にあり
では、鉄道旅を経験した方々は、どのような目的で列車の旅に出かけたのでしょうか。複数回答形式で尋ねた結果、最も多かったのは「車窓の景色を楽しみたかったから」で55.4%でした。
続いて「温泉地や観光地へ行きたかったから」が49.6%、「特定の車両・列車に乗りたかったから」が37.2%、「鉄道そのものを楽しみたかったから」が36.4%、「ローカル線に乗ってみたかったから」が32.2%という結果に。
注目すべきは、上位5つの理由のうち、「温泉地や観光地へ行きたかったから」を除く4つが、いずれも「目的地」ではなく「移動そのもの」に関する項目であるという点です。つまり、鉄道旅をする方にとっては、列車に乗っている時間こそが旅のメインイベントなのです。
飛行機や車での旅行であれば、移動はあくまで「目的地に着くまでの手段」に過ぎません。しかし鉄道旅の場合は、窓の外を流れる風景を眺めたり、線路の振動を感じたり、車内で駅弁を広げたりする時間そのものが「旅の目的」になっている。この発想の転換が、鉄道旅の最大の魅力であり、ほかの移動手段にはない独自の価値だといえるでしょう。
駅弁と車窓は最強コンビ?鉄道旅で楽しみにしていること
鉄道旅で「特に楽しみにしていること」を複数回答形式で聞いた結果も、やはり「車窓からの景色」が65.3%でトップに。旅の目的としても楽しみとしても、車窓の景色は鉄道旅において不動の王座を誇っています。
2位には「食事・駅弁・ご当地グルメ」が48.8%で続きました。流れゆく風景を眺めながら、その土地の駅弁やご当地グルメを味えるこの組み合わせは、まさに鉄道旅の醍醐味中の醍醐味。車内でお弁当を食べるという行為は、ほかの移動手段ではなかなか味わえない特別な体験ですよね。
そして3位が「列車そのもの(車両・内装・座席など)」で41.3%。4割以上の方が車両のデザインや内装にまで注目しているという結果は、鉄道旅が単なる「風景観賞」にとどまらず、乗り物としての鉄道そのものへの愛着に支えられていることを物語っています。
車窓×駅弁×こだわりの車両。この三位一体が、鉄道旅をほかにはない旅のスタイルへと押し上げているのかもしれません。
いつか乗りたい路線がある。北海道と九州に集まる熱い視線
鉄道旅の魅力を語るうえで欠かせないのが、「まだ見ぬ路線への憧れ」です。「いつか乗りたい、またはまだ乗れていない路線があるか」という質問では、73.2%の方が「ある」と回答しました。鉄道に興味がある方の7割以上が、心の中に「いつか乗ってみたい」という路線を温めているのです。
では、具体的にどんな路線が人気を集めているのでしょうか。自由記述の回答からは、大きく3つの傾向が浮かび上がりました。
まずは「北海道の路線」。釧網線で釧路湿原やオホーツク海を車窓から眺めたいという声や、札幌から釧路までの長距離を走破したいという声が寄せられました。本州では見られない大自然のスケール感と、近年の廃線の進行による「乗れるうちに乗っておきたい」という焦りが、北海道路線への関心を高めているようです。
次に多かったのが「九州の路線」。豊肥線から阿蘇山を望みたいという声や、テレビで見かける九州の観光列車に乗ってみたいという声が目立ちました。九州はJR九州が手がけるデザイン性の高い観光列車が充実しており、「水戸岡鋭治氏がデザインした車両に興味がある」という具体的な声も。メディア露出の多さが、九州の鉄道旅への関心を後押ししている印象です。
そして3つ目が「特別な列車」への憧れ。寝台特急「サンライズ出雲」、新幹線の最上位クラス「グランクラス」、嵯峨野トロッコ列車など、「その列車でしか味わえない特別な体験」を求める声が多く集まりました。日常の延長線上にある鉄道だからこそ、非日常の空間を演出する特別列車への期待が高まるのかもしれません。
旅行先を「場所」で選ぶのではなく、「路線」や「列車」で選ぶ。この発想こそが、鉄道旅ならではの旅の組み立て方だといえるでしょう。
載りたいけど乗ったことはない…なぜ観光列車の乗車率は低いのか?
近年、各地で続々と登場している観光列車。食事付きや景色重視の特別仕様など、「移動」を超えた「体験」を提供する列車として注目を集めていますが、実際の利用状況はどうなのでしょうか。
調査結果によると、観光列車に「乗ったことがある」と回答した方は16.2%。一方で「乗ったことはないが乗ってみたい」と回答した方は67.6%にのぼり、「興味がない」はわずか16.2%にとどまりました。
ここで注目したいのが、実際に乗った経験がある方は2割に届かないにもかかわらず、関心を持つ方を合わせると全体の8割以上に達するという点です。つまり、観光列車には巨大な「潜在需要」が存在しているのです。
なかなか乗車に至らない理由としては、運行本数や区間が限られていること、予約が取りにくいこと、通常の列車と比較して料金が高めであることなどが推測されます。しかし裏を返せば、これらのハードルが下がれば一気に利用が広がる可能性を秘めているともいえるでしょう。
観光列車を運行する鉄道各社にとっても、この潜在需要の大きさは見逃せないデータではないでしょうか。
観光列車に求められる「味わう時間」
では、観光列車のどんな点に魅力を感じているのでしょうか。乗ったことがある方、または乗ってみたい方に複数回答形式で聞いた結果、1位は「食事やスイーツを楽しめる」で66.4%でした。
2位は「車窓からの特別な景色」で58.0%、3位は「その列車でしか味わえない特別感」で57.1%。上位3つの項目がいずれも6割前後と高い水準で並んでおり、観光列車に求められている価値がくっきりと浮かび上がっています。
通常の鉄道旅では、車窓の景色と駅弁がセットで楽しまれていましたが、観光列車ではそれがさらにグレードアップ。地元食材を使ったコース料理やオリジナルスイーツを、絶景が流れる車窓を眺めながらいただくというのは、まさに「走るレストラン」ともいうべき体験が、多くの方を惹きつけています。
「目的地に着くまでの時間そのものを贅沢に味わう」という価値観は、効率重視の旅とはまったく異なるベクトルにあります。タイパが叫ばれる時代だからこそ、あえて「ゆっくり移動すること」に価値を見出す鉄道旅のスタイルが、新鮮な魅力を放っているのかもしれません。
今回の調査から浮かび上がったのは、「移動時間そのものが旅の主役」という、鉄道旅ならではの価値観でした。
飛行機なら数時間で着く距離を、あえて列車に揺られながら何時間もかけて移動する。その「無駄」に見える時間こそが、鉄道旅をする方にとっては何よりの贅沢なのでしょう。
気になる路線がひとつでもあるなら、まずは時刻表を開いてみては?車窓の向こうに広がる景色が、きっと新しい旅の楽しみ方を教えてくれるはずです。
- source: 株式会社NEXERと鉄道ひろばによる調査/PR TIMES
- image by:Tanawat Chantradilokrat/Shutterstock
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