日本の環境問題で語り継がれる「四大公害病」。その中でも唯一大気汚染を引き起こした三重県の「四日市公害」は、小学生の頃に授業で聞いたことがあるのではないでしょうか? 公害の原因や被害についての記憶が薄れつつある今、マンガを通して現代に伝えようと活動している方がいます。その様子を「マチノコト」からお届けします。
マンガを通して公害を現代へと伝える
「よっかいちこうがい未来カフェ」が3月20日に四日市で開催
公害は、歴史、土地、人々に大きな爪痕を残します。しかし、人々が二度と繰り返してはならないと誓ったとしても、時代が推移することで、現実味が失われ、違う世界で起こった物事のように捉えられることも少なくありません。「風化」させることなく、後世に語り継いでいくことはどうすれば可能になるのでしょうか。
三重県四日市市では、地域に存在する公害の歴史を「マンガ」から人々に「自分事」として考えるきっかけを与える人がいます。
高度経済成長期に発生した「四日市公害」
三重県四日市市の四日市コンビナートで、高度経済成長期の1960年から1972年にかけて発生した「四日市公害」。水質汚染や「四大公害病」で唯一となる大気汚染を引き起こし、四日市の町を悪臭やスモッグが襲いました。
大気汚染は、周辺住民に「四日市ぜんそく」という集団喘息障害の要因となり、昨年8月までの統計では2,200人以上がその症状に悩まされ、1,035人の方が亡くなっています。「四日市ぜんそく」が発生した当時は、10代以下の子どもと50〜60代の中高年に発症者が多く、ぜんそくが引き起こす心臓発作によって亡くなる小学生もいました。
「四日市公害」は、他の「四大公害病」と同じく教科書に記述が行われ、平成27年3月21日には四日市に「四日市公害と環境未来館」が設立されるなど、後世へ語り継ぐ動きが行われています。しかし「四日市公害」を経験した人々の高齢化や「四日市」という地域のイメージ刷新から、公害問題の風化防止は依然として課題として残っているのです。
「四日市公害を自分事として問うきっかけに」ー漫画家矢田恵梨子さん
三重県四日市市の漫画家・矢田恵梨子さんは、昨年9月に「ソラノイト~少女をおそった灰色の空~」を制作し、「公害犠牲者合同慰霊祭」にて作品公開し、今年の7月には出版も決定しました。
漫画の制作に加えて、国際基督教大学(ICU)で講演会も行った矢田恵梨子さんが、四日市公害に関心をもったのは2013年のことだったそう。関心を持つのには、どんなきっかけがあったのか。お話を伺いました。
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