平成26年6月に、富岡製糸場が世界遺産に登録された事を受け、生糸産業は静かな盛り上がりを見せています。
そんな生糸産業の歴史を学ぶ事のできるちょっとマニアックな博物館が、長野県駒ケ根市に存在します。今回は、そんなマニアな博物館である、駒ヶ根シルクミュージアムについてのご紹介です。
モスラ級の巨大幼虫が展示されているマニアックな博物館へようこそ!
長野県の生糸産業というと、岡谷市が有名ですが、駒ヶ根市は、内陸性気候の県内では比較的温暖な気候であり、山間の傾斜が多い土地柄から、稲作よりも畑作が盛んであり、古くから桑の栽培が多くされてきました。
このため、桑を餌とする蚕の飼育、すなわち養蚕が広がり、最盛期には、長野県全域の蚕繭の一割を生産していたという歴史があります。
駒ヶ根シルクミュージアムは、そんな駒ヶ根市の小高い丘の上に、平成14年4月にオープンしました。展示室は、地下1階となります。
その作りは秀逸で、吹き抜けと白壁に覆われた階段が絹その物を表す縦穴だとすると、展示室入口から横に伸びるトンネルには、現代技術によって織り込まれた色鮮やかな反物が飾られており、自然物から人工物への移行が感じられます。
艶やかなトンネルの先に広がる展示室は、シルクロードに倣ったものなのか、テーマ別の「道」に分けられています。テーマ別の道というのは、「歴史の道」、「龍水社への道」、「シルク利用の道」、「カイコの道」というものです。
「歴史の道」というのは、その名の通り、養蚕の歴史や、横浜開港と蚕糸業の発展の様子などに関する展示物があります。
また、「龍水社への道」は、伊那谷の生糸産業を支えた組合製糸竜水社の成り立ちに関する説明や、最盛期に生糸作りに使用されていた器具や機械などが展示されています。
「シルク利用の道」には、一般的な糸や布、織物に関する利用の他、二日酔い解消のための利用や、化粧品、食品への利用、さらには人工皮膚への利用などに関する説明や展示がされています。
そして、「カイコの道」です。
カイコの道には、実際に生きている蚕や繭の他、精巧に作られた蚕やさなぎ、蚕蛾などの拡大模型が展示されています。蚕に関する精巧な拡大模型がこれほど展示されている場所は、日本はもちろん、世界的に見ても類を見ないのではないでしょうか。中でも圧巻なのが、高さ2.4mの5齢幼虫の巨大模型と、蚕の体の中の変化の様子を見る事ができる回転模型です。
これらの展示物は、蚕学習に非常に効果的である事はもちろん、ちょっと変わった展示物を見てみたい!という興味本位をも十分に満足させるものだと思います。特に、巨大模型に関しては、モスラの幼虫と言っても通用する程の大きさで、記念撮影以外に利用方法が思い浮かばない位、不思議な展示物と化しています。
また、このシルクミュージアムには、体験施設も併設されており、繭や絹糸を使った様々な作品の試作を体験する事ができます。
中でも糸繰体験は、昔ながらの機械を使って糸を巻き取り、ランプシェードを作る事ができます。出来上がった作品が印象的なのはもちろん、手動の巻取機が糸の巻き位置を調整していく動きも、見ていて面白かったです。
〒399-4321 長野県駒ヶ根市東伊那482番地
Tel: 0265-82-8381
開館時間
4月~11月 9:00~17:00
12月~3月 9:00~16:30
休館日 水曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
入場料 一般 300円 / 小中学生 100円
- image by:梅原 慎治
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