横須賀発・収穫できる八百屋、畑にはアート。その原点は「食の野望」

34種の味噌からお好みで。食を自由な発想と感覚でとらえる

雨風もしのげる屋内スペース。もちろんどこでも好きなところを自由に使うことができます

屋台とネーミングされた食堂(だけどおしゃれなカフェというイメージ!)では、採れたての野菜やジモト佐島であがった魚介類などを中心にした食事をいただくことができます。

アラメの醤油糅飯(佐島産シイラと二十日大根の塩麹和えのせご飯、二種類のジャガイモとつるむらさきの味噌汁(島根県雲州味噌)、はるさめと薩摩鶏のゆず和え、シラスきゅうり)

糅飯(かてめし)と呼ばれるランチは、シンプルながら実に丁寧に作れられた一汁二菜のごはんプレート。

それぞれの素材の持つ美味しさを十二分に味わうことができ、ボリュームも満点です。週末の夜は居酒屋営業もしているので、採れたての野菜をつまみに一杯なんてオツなことも。

メニューを見るとほう…と頷きたくなるのですが、SYOKU-YABOの食事には日本の伝統的な調味料や保存食がふんだんに使われています。

というのも、世界に誇れる日本の伝統的発酵食文化の素晴らしさ ー美味しく、身体によく保存効果もある非常に理にかなったものであることー を、ひとりでも多くの人に伝えたいというのが、SYOKU-YABOが提案する野望のひとつだから。

そんな野望を実現すべく、味噌汁の味噌は、全国各地から取り揃えた34種類もの味噌から好きなものを選ぶことができるし、「大分の肉醤」「松江産鯖魚醤」「新潟のなめぜ」など聞き慣れない名前の調味料を使った料理を提供しているのです。

キッチンスペース。こちらで食べ物や飲み物をオーダーして受け取ります

「例えば、パスタの味付けに魚醤を使うというとみなさんビックリされるんですけど、イタリアンでアンチョビって定番の素材ですよね。

そう考えると、いわしで作った日本の魚醤も当然パスタに合うんです」と、食に対してなるべく既成概念にとらわれず自由な発想で自分の感覚で接して欲しいと考えるのが、SYOKU-YABOの食のありかたなのです。

「感性を鍛えろ!」食べ物への無頓着に危機感をもつこと

ちなみに、農園の成り立ちについて話せば、2009年に眞中さんがこの土地と出会ったことをきっかけにスタート。その年の6月から開墾が開始され、今のような形で営業が始まったのは翌年10月のことだそう。

「開墾」という言葉に驚く人もいるかもしれませんが、この農園は文字通りすべて一から眞中さんが仲間と一緒に切り開いたもの。

草を刈り、それまで荒地だった土地の土を耕し、畑として使えるようにする作業は並大抵のことではなかったと容易に想像がつき、この空間を見るだけでも一見の価値ありです。

虫食いだらけの曲がった野菜と「感性を鍛えろ!」の一文がデザインされたオリジナルステッカー

「私たちの身体はすべて私たちが食べた食べ物からできている」という、当たり前だけどシンプルで大切なことはすべて「食」にあると考えるSYOKU-YABOは、「感性を鍛えろ」という言葉をスローガンに掲げています。

それは、野菜はオーガニックでないとダメとか、化学調味料が入ったものは一切口にしないとか、そういったことではありません。

ただ、多くの人が食に対してあまりにも無頓着であることへの危機感。化学調味料や人工的加工品があふれる今の食生活の中で、自分が何を食べているかまったく理解せず、不自然なものを不自然と思わない感覚への危惧を言葉にしたものです。

考えてみれば、曲がった野菜や虫に食われた野菜は不自然ではなく自然に育つ中では当たり前だし、新鮮な美味しい野菜の味を知っていれば化学調味料だらけの味はやっぱりどこか不自然に感じるのが普通、というごくごく当たり前のことを当たり前に感じる感性を育てようというのがSYOKU-YABOのメッセージなのです。

と、ここまで言葉で読んでみると、何やら小難しい印象を受けた人もいるかもしれませんが、まずは舌でその食を味わいにSYOKU-YABO農園へ出かけてみてはいかがでしょうか?

そして緑にあふれ野鳥が飛び交う農園の自然を目で楽しみ、草木や土の匂いを鼻で嗅ぎ、虫たちやカエルたちの鳴き声に耳を澄まし、踏みしめた林道や手のひらに触れた木々の枝の感触に五感を解放してみては?

「食の野望」とまるで大事のように言葉を並べているけれど、結局は拍子抜けするほどその野望はシンプルなものであることにきっと気づくと思います。

SYOKU-YABO農園

住所:神奈川県横須賀市芦名2-1700
電話番号:090-8879-1931
営業日:季節・天候によって変更があるため、お電話またはホームページでご確認ください。

  • image by:小林繭
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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