ダム湖から復活した、船でしか行けない秘湯「大牧温泉」

湖畔に再建された大牧温泉 image by : 砺波市商工観光課フォトライブラリー

TRiP EDiTORでは「黒薙温泉」や「宇奈月温泉」などの秘湯を紹介してきましたが、それらに負けない山間の湖畔にある秘境の温泉宿が、富山県にはあります。その名も大牧温泉。最大の特徴として通常の宿泊客は「船でしか行けない」という立地にあります。そこで今回は大牧温泉の魅力を紹介したいと思います。

南北朝から室町時代に移り変わるころに旅僧が渓谷で発見した秘湯

庄川でアユ釣りを楽しむ釣り人たち。庄川はアユでも有名。 image by : 砺波市商工観光課フォトライブラリー

富山県の西部に、庄川という一級河川が流れています。岐阜県北部の飛騨高地に源流を持ち、富山県の山間部を流れて下流に広大な扇状地を作る川ですね。扇状地を作った後は射水市で富山湾に注いでいますが、その庄川の上流に大牧温泉という秘湯があります。

大正2年に書かれた『越中の大牧温泉』(砺波郷土資料館蔵)の引用文が『利賀村史』(編集・利賀村史編纂委員会、発行・利賀村)に紹介されていますが、同書によると開湯は1389年~1392年にさかのぼります。歴史で言えば室町時代の始まり、京都で南北朝が統一されたころですね。

そのころ、旅の僧侶が山深い同地を歩いていると、山バトが群れを成して渓谷に降りていく様子を見かけたのだとか。何事かと渓谷に降りてみると、河原に温泉がわいていていると発見したそう。渓谷とは今の庄川峡ですね。

それ以来、近在の人には知られた温泉になり、江戸時代になると湯治客から湯銭を集めるようになったと言います。さらに江戸末期には六郎右衛門という人が同地を所有し、家を建てて温泉宿として経営し、明治維新を迎えたのだとか。宿の公式ホームページ上にはまた異なる記述があり、平家の落ち武者が1183年に同地をさまよっているころに発見したとも書かれています。いずれにせよ、とても歴史のある温泉なのですね。

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